2010年03月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

会計残された課題(1)投資事業組合――ライブドアの余波広がる(日経新聞2006/03/15)

会計基準関係

 東京地検特捜部がライブドア粉飾事件で、堀江貴文前社長らを証券取引法違反罪で追起訴・起訴した。連結から外した投資事業組合を悪用した粉飾の手口が明らかになり、会計基準の課題が改めて浮き彫りになりつつある。減損会計の導入などここ数年で急速に進んだ会計ビッグバンの後に残る、会計基準の重要な課題を検証する。

連結対象に変更
 「投資事業組合への社会的な関心が高まる中、連結対象にするのが投資家のためにも最善と判断した」。当初予定より半月遅れで今月十日に決算発表したビジネスバンクコンサルティングの大島一成社長はこう話す。会計コンサルティングを手掛ける同社は、二月上旬に傘下の投資組合を連結することを決定。前十二月期の連結決算書を作り直し、発表が遅れた。
 BBコンサルは昨年十月に、不動産などの投資会社を買収した。この投資会社が設定・運営していた十六の投資事業組合について当初、出資比率に応じて損益を反映する「持ち分法」による会計処理を予定していた。
 だが、ライブドア事件発覚後の一月中旬、担当のあずさ監査法人から「連結対象となる可能性がある」と連絡を受けた。BBコンサルは投資組合に対する支配力などを考慮し、連結すると総資産は前期末で三百十六億円と、一年前のおよそ八倍に膨らんだ。
 ライブドア事件の余波で、投資事業組合の会計処理に対する監視の目が厳しくなっている。ライブドアが連結外の投資組合を悪用し、自社株の売却収入を不正に本体に還流させていたからだ。
 「専門的な議論は結構ですが、こういう大問題が起こった限り、このままでいいということは無い。それを肝に銘じてやってください」。先月開いた自民党の企業会計小委員会。渡辺喜美委員長は声を荒らげた。
 矢面に立ったのは企業会計基準委員会の斎藤静樹委員長だ。現行基準でもすでに出資比率や役員派遣など、実質的な支配力で連結の是非を判断するルールがある。斎藤委員長が現行基準に問題がないと繰り返し説明したのに対し、渡辺議員は「くぎを刺した」。

SPCにも影響
 議論の高まりは、投資事業組合と同種のペーパーカンパニーである特別目的会社(SPC)を多用する不動産会社の経営にも影響を与える。
 「我々は決まりに従っている。ライブドアの脱法行為とは一緒にしてほしくない」。不動産証券化協会の二月下旬の記者会見で、岩沙弘道理事長(三井不動産社長)はこう強調した。
 不動産各社は、将来転売するなど一定の条件を満たせば連結対象にしなくていいSPCを、大型開発で活用している。大手四社の昨年九月末のSPCへの出資残高は三千億円強と一年前に比べ五割増。銀行などから資金調達しており、これらSPCの総資産は一兆円前後に上るもようだ。
 SPCの経営は独立しており、不動産会社はSPCが抱える借金などに対し責任を負わない。ところが、最近は資金調達の仕組みが複雑で「SPCが本当に独立し、不動産会社がリスクを負っていないのか不透明なケースが出ている」とベテラン会計士は話す。
 不動産会社が活用するSPCは、二〇〇〇年施行の資産流動化法などに準拠しており、ライブドアが悪用した任意の投資組合とは異なる。不動産業界はライブドア事件の余波で、SPCの連結ルールも強化されると、都市再開発の流れに支障が出ると危惧する。
 エンロン事件でSPCの悪用が発覚した米国ではその後、ペーパーカンパニーの会計ルールが厳しくなった。国際会計基準では支配下にあるSPCはすべて連結するのが原則で、ペーパーカンパニーの連結基準を厳しくするのが国際的な流れである。

▼連結範囲
 出資比率が五〇%を超えるグループ会社の場合、連結子会社として売上高や利益、資産や負債などをすべて連結財務諸表に含めなければならない。五〇%以下でも出資比率が四〇%以上の会社に、役員を送り込むなど実質的に経営を支配している場合も、連結子会社となる。投資事業組合も同様のルールが適用される。
 投資事業組合の場合は外部の投資家が資金の大部分を拠出している場合があり、連結範囲に含めるかどうかの線引きは難しいとされる。

2006年03月15日