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リース会計基準変更の問題点(十字路)(日経新聞2006/03/31)

会計基準関係

 企業会計基準委員会(ASBJ)はファイナンスリースの会計処理に関し例外的に認めていた賃貸借処理を廃止し、売買処理に一本化する方針だ。計算書類への記載も脚注から本体開示に変わり、オンバランス化(貸借対照表への反映)が図られる。
 オンバランス化に対してはリース取引の実態、財務諸表の比較可能性、国際会計基準との調和などで異論も多く、例外処理の廃止は事務負担の増加によるユーザーの離反や利益操作的商品の横行を招くとの懸念もある。しかし、国際基準への統一化に向けてASBJの意志は固い。
 この点、最近の二論文(弥永真生筑波大学教授・金融法務事情1761号、田路至弘・円藤至剛弁護士・商事法務1755号)に注目したい。ともに会社法の観点から基準変更の問題点を指摘する。
 第一はリース資産・負債の測定基準が一義的に定まらないこと。たとえばリース資産の評価を時価―残存価格+将来のリース料の金利部分とするとユーザーが金利部分を把握して記帳するのは不可能に近い。将来のリース料の割引現在価値を取得原価とする方法も保険料やリース会社のサービス対価が含まれるため過大評価が問題となる。そもそも、割引率の選定自体恣意(しい)性の排除が難しい。
 いずれも、会社法の主要目的である分配可能額を算定する上で大きな問題となる。
 指摘の第二は貸借対照表の利用者に誤解を生ぜしめる危険だ。ユーザーが財務的に危機に陥るとリース会社は契約を解除して物件を引き揚げる可能性が高く、債権者はユーザーの貸借対照表をより慎重に読む必要がある。
 さらに、「新基準が唯一の公正なる会計慣行として法的拘束力を持つには、関係者に不意打ちとならない手当てが必要」とする、東京地裁判決との調整も両弁護士の指摘どおり気になるところだ。近々、発表予定と言われる具体的基準に注目したい。

2006年03月31日