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のれん計上が利益圧迫(日経新聞2006/11/09)

会計基準関係

M&Aのコスト負担膨らむ
 上場企業の決算で、企業のM&A(合併・買収)に伴う会計上のコストを示す「のれん」の処理が、利益の変動要因となる例が目立ってきた。M&Aに絡む会計処理を定める「企業結合会計基準」の適用が四月から始まり、のれんの計上と費用処理を義務付けたのが背景。予想外の被買収企業の収益の悪化などで、減損処理が大きく膨らむ例も出ている。
セブン&アイ今期85億円
国際石開帝石は75億円に
 セブン&アイ・ホールディングスは九月にヨークベニマルを株式交換で完全子会社化、約六百億円ののれんが発生した。ミレニアムリテイリングとの経営統合などで、八月末の連結貸借対照表に資産計上したのれんは三千四十五億円。これにヨークベニ分を加え、償却の必要がない米国子会社分を除いて試算すると、二〇〇七年二月期の償却額は約八十五億円と予想営業利益の三%弱に相当する。
 〇七年四月に持ち株会社方式で経営統合するスカイパーフェクト・コミュニケーションズとJSAT。新会社が計上するのれんは百二十億円前後になるもようだ。四月に経営統合で誕生した国際石油開発帝石ホールディングスの計上額は千五百億円、毎期の費用処理は七十五億円にのぼる。
 M&A会計では、買収金額と被買収企業の時価純資産の差額を「のれん」とし、買収企業が資産に計上。二十年以内に販売費・一般管理費で償却する。のれんは実質的な買収コストを意味し、投資家は買収の成果を把握しやすくなった。
 のれんの計上はこれまで、主に現金買収に限られていたが、新ルールでは株式を買収対価とする株式交換、株式移転、合併でも原則発生するようになった。会計上は株式を時価発行して買収したと見なすためだ。
 被買収企業の収益が悪化し、多額の損失を計上する例も目立つ。技術者派遣のメイテックは七日発表の〇六年九月中間決算でのれんの減損損失四十二億円を特別損失に計上、最終赤字に転落した。
 東洋水産は〇七年三月期にのれんの減損損失四十一億円を特別損失に計上、連結純利益が六十四億円と前期より五四%減る見通し。USENやインデックス・ホールディングスが監査法人から子会社の企業価値低下を指摘されて多額の減損処理を余儀なくされるなど、のれんは業績の大きな波乱要因にもなっている。
▼のれん
 企業の買収や合併に際し、多くのケースでは投資額と時価評価した被買収企業の純資産額に差額が生じる。この差額を調整するため貸借対照表上に資産計上するのが「のれん」で、買収される企業の成長力やブランド力に当たる。買収金額が被買収企業の純資産を下回る場合には、「負ののれん」を負債計上し、償却額は営業外収益の利益にする。
株式交換・移転で「のれん」が発生した事例          
実施時期    買収企業  被買収企業  金 額(億円)  償却期間
06年  4月  国際石開  帝石  1,500  20年
6月  バンナムHD  バンプレスト  100  5年  
7月  コカウエスト  近畿コカ  ▲20  5年  
9月  セブン&アイ  ヨークベニ  600  20年  
9月  アスティ  FDCP  100  20年  
10月  阪急HD  阪神  640  20年  
10月  USEN  ギャガ  ※85  未定  
10月  サイバード  JIMOS  ※70  未定  
10月  日電計算  証券代  ▲140  5年  
12月  コナカ  フタタ  ※▲30  ※5年  
07年  4月  スカパー  JSAT  ※120  未定
(注)一部企業の「のれん」は現金買収分や、既に取得済みの株式について発生した分を含む。▲は負債計上、それ以外は資産計上。  ※は日経推定。買収・被買収企業は会計上の区分          

国際基準や米国基準、減損処理のみで対応
 「のれん」の会計処理は日本と海外では大きな違いがある。日本はのれんを均等償却することに加え、のれんの価値が大きく目減りした場合は減損処理の対象とする。
 これに対して、国際会計基準や米国会計基準ではのれんを均等償却せず、減損処理のみで対応する。米国では二〇〇一年一月にアメリカ・オンライン(AOL)がタイムワーナーを買収。翌〇二年にのれんの減損損失五百四十二億ドル強を計上し、AOLタイムワーナーは約九百八十七億ドルという巨額の最終赤字に陥った。
 のれんの扱いは、日本が国際会計基準と会計の共通化を進めるなかで注目されている。日本基準の独自性が強い部分だけに、国際会計基準を作る国際会計基準理事会などが、両基準の異なる点として指摘している。

2006年11月09日