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監査業務、みすず、夏にも全面移管(日経新聞2007/02/20)

中央青山:一時監査人

大手3法人と協議、3月期決算影響回避
日興不正会計引き金
 大手監査法人のみすず監査法人(旧中央青山)は十九日、新日本など大手三法人などに監査業務をほぼ全面移管する方針を固めた。三月期決算企業の監査が終わる夏以降、所属会計士や一般職員らを他法人に受け入れてもらう。みすずはカネボウや日興コーディアルグループなど監査先企業で不正会計が相次ぎ信用が低下していた。今三月期決算については業務を従来通り継続、監査先企業への影響を回避する。
 みすずは監査業務を移管する方向で、新日本、トーマツ、あずさの大手三法人などと協議に入った。みすずは現在、京セラなど約六百社の上場企業の監査を担当。信用の低下を受けて、みすずでは所属会計士が法人を離脱したり、他法人による人材引き抜きの動きが表面化するなどで、法人運営が混乱していた。
 みすずの法人運営が安定しないと、上場企業など多くの企業の監査に支障が出る懸念が高まっていた。加えて、日興の不正会計に絡み、金融庁から行政処分を受ける可能性も浮上。みすずは危機管理対策として業務移管を選択したもようだ。
 みすずは混乱を回避するため、三月期決算企業の今年度の監査が終了する夏までは、人材の引き抜きなどをやめるよう他の法人に要請。そのうえで夏以降にみすずの顧客企業の監査業務とともに、所属会計士も受け入れるよう依頼を始めた。
 みすずは近く、一般企業の株主総会に相当する、出資者の幹部会計士(パートナー)約三百人による社員総会を開催。監査業務を他法人に移管する基本方針について機関決定するもよう。ただ、監査法人を選ぶのは企業であることから、実際にどのような規模で業務移管が進むのかなどについては不透明な面もある。
 みすずは旧中央青山時代の昨年夏、カネボウによる粉飾決算に所属会計士が加担していたとして、二カ月の業務停止処分を受けた。その結果、一部会計士が離脱してあらた監査法人として独立したほか、監査を担当していた約八百社の上場会社のうち、二割超が他の監査法人にくら替えした。昨年末には、二〇〇六年三月期までの監査を担当していた日興でも不正会計が発覚した。
 相次ぐ上場企業の不正会計が、大手監査法人の事実上の解体という事態に発展する。
 昨年六月には、ライブドアの監査を担当した中堅の港陽監査法人が自主解散した例がある。
みすず監査法人
 一九六八年に設立した監査法人中央会計事務所が前身。二〇〇〇年に青山監査法人と合併し、中央青山監査法人となった。昨年末現在で、約千二百人の会計士が所属し、その他の職員も含め計二千四百四十九人の人員を抱える大手監査法人。新日本製鉄や京セラ、セブン&アイ・ホールディングスなど約六百社の上場企業の監査を担当している。
 昨年夏のカネボウ事件に絡む業務停止処分を機に、旧青山出身の会計士を中心とした部隊が、あらた監査法人として分離独立。中央青山は昨年九月、法人名をみすずに変え再出発した。

みすず監査業務移管、混乱、最小限に食い止め、5大法人体制崩れる
 みすず監査法人(旧中央青山)が大手三法人などへの監査業務移管を決断した背景には、顧客企業に対しできるだけ早い時期に監査業務引き継ぎの道筋を示すことで、混乱を最小限に食い止める狙いがある。
 粉飾決算に加担したとして所属会計士四人が逮捕されたカネボウ粉飾事件で、みすずは昨年七―八月の二カ月間、金融庁から業務停止処分を受けた。当時の顧客企業は突然訪れた“監査の空白”に大混乱に陥った。顧客企業の約三分の一は、空白期間に代わりとなる「一時会計監査人」を選ぶことができなかった。
 日興コーディアルグループの不正会計問題では、金融当局が旧中央青山の監査判断を真っ向から否定。不適切な会計処理を許したことに対し、顧客企業からは「仮にみすずが再び行政処分を受けたら、財務諸表の作成や監査に計り知れない支障が出る」(財務担当役員)と不安視する声も出ていた。
 今回のみすずの判断は、再度の行政処分という最悪のケースを想定。同法人幹部からは「再び行政処分を受けた監査法人を選ぼうとしても、企業は株主に説明できないのでは」との声も出始めていた。
 業務移管を早期決断したもう一つの理由は、公認会計士の他業界への流出防止。会計士の引き抜きが横行すれば、会計基準の厳格化や内部統制監査の準備で人手不足に悩む監査業界で「人材流出に歯止めがかからなくなる」(日本公認会計士協会幹部)と懸念する声もあった。
 上場企業の不正会計は、監査業界の五大法人体制を突き崩した。米国ではエンロンの不正会計事件を契機に、アーサー・アンダーセンが実質的に廃業に追い込まれた。米国ではその後、企業改革法が制定され、会計監査の品質向上へ向けた取り組みが強化された。

2007年02月20日