2010年02月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

みすず「突然の廃業」回避(日経金融新聞2007/02/21)

中央青山:一時監査人

自力再建断念、早期に顧客引き継ぎ
 みすず監査法人(旧中央青山)は二十日、トーマツ、新日本、あずさの大手三法人と、今年夏以降の公認会計士・職員の移籍に向けた協議開始で基本合意したと正式発表した。約四十年に及ぶ名門の歴史に事実上の終止符を打つ。
 カネボウ事件を巡る業務停止処分が明けた昨年九月から、再生に向け険しい道を歩き始めたばかりだった。だが、旧中央青山時代に残した日興コーディアルグループの不正会計問題という“負の遺産”に行く手を阻まれ、市場の信頼を取り戻すことはできなかった。
 「顧客企業に迷惑を掛けたくない。七月以降の監査業務引き継ぎをよろしくお願いします」。今月十五日、みすずを含む大手四法人のトップと日本公認会計士協会の幹部を集めた会合の席上、みすずの片山英木理事長がこう切り出した。
 驚いた会計士協会幹部の一人からは「自力再建をあきらめるには時期が早すぎる」と再考を促す声も出た。しかし、片山理事長は「証券市場や顧客の混乱を最小限にとどめたい。(移管する)代わりに、会計士や顧客の無理な引き抜きはやめてほしい」と三法人の幹部に強く訴えたという。
 昨年九月以降、みすずは監査チェックの強化を軸とした法人改革を打ち出し、カネボウ事件で地に落ちた顧客の信頼回復に全力を注いできた。業務停止を契機に上場企業の顧客約八百社のうち約二百社は失ったが、「これだけの企業が再契約してくれたのは改革に対する信頼の証し」と光明を見いだす幹部もいた。
 米ではエンロンの粉飾事件に関与した大手会計事務所アーサー・アンダーセンが実質廃業に追い込まれた。みすずが早期に再生を断念したのは、日興の利益水増しを結果的に許した監査責任を問う声が日増しに強まる中、アンダーセンのような突然の業務打ち切りを避け、時間的余裕をもって顧客引き継ぎの道筋をつけることで混乱を食い止める狙いがある。
 業務停止期間中に職員から公募し決めた法人名の「みすず」とは、山地に群生するササの一種。風雨が吹き付ける過酷な環境でも力強くしなやかに成長する姿に重ねた法人再生への願いは、ついにかなわなかった。

みすず理事長、監査業務移管、「業界の影響考慮」――中小も移籍可能
 みすず監査法人は二十日、監査業務の移管について新日本監査法人などと協議することで基本合意したと発表した。記者会見したみすずの片山英木理事長との一問一答は以下の通り。
――実質上の解体を決断したのはなぜか。
 「さまざまな検討の結果だ。(人材流出で)監査契約はあっても、監査する人がいなくなる可能性もある。そうなれば監査業界全体に悪影響が出てしまう。提携相手の米プライスウォーターハウスクーパースから見限らて決断したというわけではない」
――職員が次々と辞めていく理由は。
 「組織が不安定ななか、精神的なプレッシャーがあり、一部の社員が移籍を考えるのはやむを得ない。安定した環境で業務を遂行できるようにしたかった」
――中小企業も監査先を移籍できるのか。
 「我々が監査を受け持ってきた企業で、他の法人で受け入れてもらえないケースが出てくるとは思えない」
――顧客企業の株主から提訴された場合はどうなるのか。
 「社員は他に移籍しても責任はついて回り、訴訟リスクはある」
――今回の基本合意にあらた監査法人が入っていないのはなぜか。
 「昨年、あらたが誕生した際に移籍についての基本合意があったためだ。顧客の希望があれば別だが、受け入れ体制の問題もあり、あらたが吸収できる余地は大きくないのではないか」
――金融庁には説明したのか。
 「事前に説明した。やりとりの詳細については話せない」

2007年02月21日