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問われる会計・上場制度(日経新聞2007/02/24)

中央青山:一時監査人

三洋電機・日興問題で浮き彫り
「破綻でないが問題」企業の扱い
東証、見直し急務
 日興コーディアルグループと三洋電機。東京証券取引所の一部上場企業の会計処理で相次ぎ問題が発覚したことで、東証は上場制度の広範な見直しが急務になった。素早く対応しないと、国際的な競争力の低下につながりかねない。
 三洋の不適切な会計処理は二〇〇四年三月期の単独決算に限られる。不適切処理が伝えられた二十三日も、東証は同社株を上場廃止の可能性がある監理ポストへの割り当てを見送った。会計処理の実態が不明であるうえ、証券取引等監視委員会の判断にも流動的な部分が残るからだ。このため一般の投資家は思惑だけで三洋株を売買せざるをえなかった。
 思惑に基づく投機的な売買は日興株も同じ。監理ポストに割り当てられてから約二カ月間、市場は上場廃止・維持を読みかねている。シティグループの支援検討が明らかになったことで、今後の日興株の売買はさらに投機的になりそうだ。
 西武鉄道やカネボウはそれぞれ「大株主の持ち株比率過少記載」「債務超過」といった上場廃止の要件になりうる財務実態を隠していた。そのため東証も「虚偽記載の影響は重大」と判断できた。日興は経常利益を上乗せしたとはいえ、債務超過ではなく上場維持の要件を満たしていた。そこに判断の難しさがある。
 機関投資家の間には、「東証の監理ポスト割り当てや上場廃止の制度が硬直的なため、市場第一部でさえ投機の場になる恐れがあることを示した」との批判も高まり始めた。金融庁や証券取引等監視委の動きを待つことなく、独自の判断で機動的に監理ポストに割り当てるくらいの自主性があっていい。監理ポストの割り当て期間を短縮したり、いったん上場廃止にして再上場への条件を緩くするといった柔軟な対応を求める声もある。
 東証の上場廃止制度は、企業破綻を想定している面が強い。「破綻していなくても問題含み」というグレー企業の扱いは、今までほとんど議論されてこなかった。多くの外資や買収ファンドが日本に進出する今は、非公開になっても経営は続けられる。そうした新しい現実を前提に上場制度を再設計しないと、東証は投資家保護で後れを取り、国際的なお金の流れを呼び込むことも難しくなる。

会計士の責任、どこまで
 三洋電機の過去の会計処理が不適切だったことを証券取引等監視委員会が問題視している。単体決算に子会社株式の評価損を反映させるべきなのに見送ったという。ただ、会計基準には裁量の余地もある。悪意があったのかどうかがポイントだ。
 現在、投資家が重視しているのは連結決算。今回問題になっているのは三洋電機の二〇〇四年三月期の単体決算だが、グループ内の子会社の株式評価損は連結決算には影響しないので、会計士が連結決算を監査するときほど厳密に考えなかった可能性もある。
「悪意の実証」カギ
 もともと非上場子会社の業績が不振でも、出資金の評価損をいつ計上するかの判断は難しい。子会社が取り組んでいる業務は必ず回復すると会社側に強調されれば、会計士も反論しにくいのが実情だ。経営資源の投入状況、過去の実績、景気動向などを基に総合的に決めざるをえない。
 日興コーディアルグループの不正会計で問題になったような特別目的会社(SPC)に関しても、連結するかどうかを一律には決められない。会計士がどの程度支配が及んでいるかの実態を検討しながら、個別に決めることになっている。
 三洋電機のケースで会計士がとがめられるとすれば、会社側が不正に利益を膨らます意図を持っていて、会計士がそれを承知しながら追認した場合だ。その因果関係が立証できるのならば、会計士に対する行政処分は当然だし、その前に不正な会計処理をした三洋電機の経営陣の責任を厳しく問う必要があろう。
 ただ、三洋電機がその後に経営危機に陥ったことや、担当会計士がよく問題を起こすみすず監査法人に所属しているという点だけをみて、不正があると決め付けるのは非建設的。今の基準で過去を断じれば、過剰規制になる恐れもある。
 残念ながら日本では監査法人の力が企業に比べて圧倒的に弱い。その力関係のなかで、今から見れば「甘すぎた」と思う会計処理を認めてしまった例も多いといわれる。ただ、それをほじくり返し、会計士の責任を厳しく問えば、「会計士のなり手などいなくなってしまう」(ベテラン会計士)との声もある。
 もし当局が行政処分を検討するのならば、三洋電機の会計処理は当時の基準や社会通念に照らし合わせても悪質だったのかどうか、その場合に会計士はどんな形で関与していたのか、経営陣と会計士とどちらにより多くの責任があるのかなどを、丁寧に説明する必要がある。
 過去の不正な会計処理を疑われているのは、三洋電機だけではない。次々と行政処分をすることだけが当局の役割ではない。会計・監査不信を根本から断ち切るために、知恵を絞るべきときではないか。

みすず監査法人、不正会計関与、再び疑惑浮上
 みすず監査法人(旧中央青山)に再び不正会計問題に関与した疑惑が浮上している。不適切な会計処理が取りざたされている三洋電機の二〇〇四年三月期決算について、監査を担当した中央青山(当時)が「適正」との意見を出していたためだ。同法人はカネボウや日興コーディアルグループの不正会計にもお墨付きを与えていただけに、山本有二金融担当相は二十三日の会見で「旧中央青山の監査では遺憾に考える部分が多い」と不快感をあらわにした。

2007年02月24日