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金融庁、課徴金引き上げ検討(日経新聞2007/06/10)

不適切な会計処理

金融庁、課徴金引き上げ検討
虚偽開示など、制裁色強める
 金融庁は虚偽の情報開示をした企業などにかける課徴金を引き上げる検討に入った。不当に得た利益を没収するだけの今の制度を改め、米国のように制裁色を持たせる。課徴金を適用する対象をTOB(株式公開買い付け)規制違反などに広げることや、違反を自ら申し出た企業・個人の課徴金を減免する仕組みの創設も視野に入れる。資本市場を舞台にした企業の法令違反が相次ぐなか、罰則を強化し違反行為を減らしていく狙いだ。(課徴金は3面「きょうのことば」参照)
適用対象の拡大も視野
 金融庁は月内にまとめる金融審議会(首相の諮問機関)の中間論点整理に、課徴金引き上げや適用範囲の拡大について年内に結論を出す方針を明記する。今年九月から金融審議会で具体的な議論を始め、来年の通常国会で金融商品取引法(九月に施行されるまでは証券取引法)の改正を目指す。
 証券取引法上の課徴金は、刑事罰ではなく行政罰として二〇〇五年四月に導入された。証券取引等監視委員会が処分を勧告し、金融庁が納付命令を出す仕組みとなっている。対象となる行為はインサイダー取引、相場操縦、風説の流布・偽計、虚偽の書類をもとにした有価証券の発行、虚偽の有価証券報告書の提出の五種類で、これまでに二十件の実績がある。
 ただ、現在の課徴金は法違反で得た利益を没収するという考え方を基本としているため、四万円の例が出るなど低い金額にとどまる場合が多い。虚偽の記載がある書類に基づき社債を発行した日興コーディアルグループに五億円を科した例もあるが、大企業に対する水準として不十分との見方もあった。
 米国は不当に得た利益の二―四倍程度を制裁金として科す仕組みとなっている。巨額の粉飾決算事件を起こした米通信大手MCI(旧ワールドコム)に七億五千万ドル(約九百億円)の制裁金支払いを求めるなど、米証券取引委員会(SEC)などの規制当局が多額の制裁に踏み切る事例も多い。
 金融庁は有価証券報告書の訂正が急増していることも踏まえ、「やり得」に終わらない水準まで課徴金を引き上げていく方針だ。米国に近い水準まで引き上げれば、日本でも十億円単位の課徴金を支払う例が増える可能性がある。
 適用対象の拡大も検討する。TOBルールに違反して株式買い付けを実施した企業や、金融商品取引法に違反した証券会社などが想定されており、課徴金の網をかけることで違反行為を抑止したい考えだ。
 さらに「自首」してきた企業や、「うっかりミス」で法違反を犯してしまった企業などについては独占禁止法の課徴金のように、減免する仕組みも検討する。現在の仕組みは決められた計算方法で機械的に課徴金を割り出すため、柔軟性を持たせるべきだとの声が監視委などから出ていた。
 独占禁止法も企業への制裁強化の方向で議論が進められているが、経済界では反対論が根強い。インサイダー取引など資本市場を汚す行為に対する課徴金引き上げには反対しにくいとみられる。

課徴金(きょうのことば)
▽…刑事罰としての罰金とは別に、法違反を犯した個人や企業に金銭的な負担を求める行政処分のこと。金融庁が納付命令を出す証券取引法上の課徴金のほかに、カルテルや談合に対して適用する独占禁止法上の課徴金制度がある。
▽…制裁色が強い欧米の動向を踏まえ、日本でもここ数年、水準や対象を見直す動きが相次いでいる。昨年の独禁法改正では引き上げと同時に、再度の違反者の課徴金を5割増しにするルールを追加。今国会で成立見通しの公認会計士法改正案でも、監査法人に対する課徴金制度の新設が盛り込まれた。

金融庁が課徴金納付命令を出した主な事例    
納付命令日    対象者             課徴金額
2006年12月  東日本ハウス           200万円
           TTG                1億3133万円  
2007年1月   日興コーディアルグループ   5億円
3月   コマツ    4378万円
5月   大塚家具   3044万円

2007年06月10日