2010年02月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

内部統制ルール実質緩和(日経新聞2007/06/30)

会計基準関係

金融庁方針、企業の負担軽減
 金融庁は二〇〇八年度から全上場企業に適用する「内部統制ルール」を実質緩和する方針を固めた。毎年点検を義務付ける範囲を当初決めた実施基準より緩めることを検討。具体的には点検すべき部署・拠点を「売上高全体の三分の二」から引き下げる方向だ。公表すべき管理上の「重要な欠陥」の範囲も狭める。米国ではルールを厳しくした結果、企業の負担が急増し競争力を弱めた。日本でも導入前に高まる懸念に対応し、企業の負担増を和らげる。
部署・拠点 自主点検の範囲狭く
 内部統制ルールは企業に財務上の不正を起こす恐れはないか全社的に点検し、年一回、有価証券報告書と一体となった報告書作成を求めている。カネボウなどで相次いだ粉飾決算事件を受け昨年成立した金融商品取引法に盛り込まれた。
 金融庁は二月に点検対象の範囲などを盛り込んだ実施基準をまとめた。今回の緩和策は今秋にも公表する「Q&A」と呼ぶ解釈集の中で示す。
 点検対象となる部署や支店・工場などの合計売上高が全売上高の三分の二以上となるよう義務付けていたが、それ以下でも認める方針だ。最終判断は会計士に委ねるものの、二分の一程度に範囲を絞り込む例が出る可能性がある。
 制度導入時に管理のためのシステム投資がかさむ点も配慮する。金融庁は売上高で合算して五%程度に満たない小規模な部署・拠点は点検の対象外とし、システム整備などを求めない方針だ。
 一方、自主点検の結果、内部統制上の「重要な欠陥」が見つかった場合、投資家への公表を義務付けている。実施基準では、不備があった部署の連結税引き前利益に占める割合が五%程度を上回る場合に公表するとしている。緩和策では、その部署の利益の割合が一時的な理由で五%を超えた場合は、公表の対象外にできるようにする。
 東京証券取引所は当初、「重要な欠陥」が一定期間を経ても改善しない場合は、上場廃止の対象にすることを検討していた。これに対し金融庁が対象外にするよう要請。東証も重大な虚偽記載などがない限り、内部統制の欠陥だけでは廃止しない方針に転換した。
 エンロンなどの大型粉飾決算事件を教訓に先行導入した米国では、企業負担の重さを一因に新規上場がロンドン市場へ流出する事態も起きている。日本でも米国基準で内部統制ルールを実施している日立製作所の負担が前期に約百億円に達するなど、〇八年度の実施を前に、経済界からルールの緩和を求める声が上がっていた。
 今回の措置は企業の負担軽減を求める声に応えたもので、制度実施前に緩和策を打ち出すのは異例。米国が内部統制ルールの緩和に動いていることにも配慮した。
 企業が実際に緩和する際は会計士が判断し、責任も負ってもらうことで内部統制ルールの骨抜きには歯止めをかける。

内部統制ルールの緩和策  
〈金融庁〉  
▽毎年の点検範囲  
実施基準:点検拠点の合計売上高が全体の3分の2以上を目安
緩和策:3分の2を下回る水準も容認
▽導入時の文書化作業、システム投資など  
実施基準:全拠点
緩和策:売上高で計5%未満の小規模拠点は対象外も
▽「重要な欠陥」の公表  
実施基準:不備のあった部署の連結税引き前利益に占める割合が5%超の場合
緩和策:5%超が一時的な要因と認められる場合は対象外
〈東京証券取引所〉  
▽「重要な欠陥」を公表した企業  
当初案:上場廃止の方向で検討  
緩和策:廃止の検討対象から除外

▼内部統制
 企業が粉飾決算を未然に防ぐ社内の管理体制を整えること。伝票を二重三重にチェックしているか、重要なデータの閲覧を特定社員に限定しているかといった点を部署ごとにチェックする。抜き打ち検査など、実効性を保つ体制づくりも重要。点検状況について企業が報告書をまとめ、公表前に監査法人が監査する。
 企業は社員用のマニュアルなどを整備。不正防止のために定期的な研修も求められる。

内部統制ルールの実施基準
▽…金融庁の企業会計審議会(長官の諮問機関)が今年2月、内部統制ルールを円滑に実施するため経理担当者や会計士向けに公表した実務上のガイドライン。柱の一つは、点検対象となる部署や拠点を連結売上高の3分の2以上を目安とした点。本社や工場、営業店舗、子会社・関連会社など事業部門ごとに売上高が大きい順に対象とする。
▽…これに対し、日本経団連を中心に企業側は実施基準の内容では負担が重いとして、内部統制ルール導入前に緩和策を求めていた。日本公認会計士協会は金融庁作成の実施基準とは別に、会計士向けの実務指針を近く公表する予定。金融庁からの要請を受け、企業側の負担増に配慮した内容になりそうだ。

2007年06月30日