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情報開示新時代(上)XBRLで投資革命(日経金融新聞2007/07/17)

会計基準関係

財務データ、個人が分析
 二〇一×年四月。決算発表がピークに達する午後三時になると、パソコンの画面が点滅し、登録しておいた企業の財務データが次々と最新のものに変わっていく。あらかじめ設定してある計算式に基づいて企業価値を自動的に計算し、お目当ての株が同業他社と比べて割安か割高かを“判定”。あとは株の売買注文を出すだけ――。
 数年後には、個人投資家の「情報武装」がここまで進んでいるかもしれない。少なくとも、「エクセル」などの表計算ソフトに数字を手入力したり、ウェブサイトのデータを一つひとつコピー&ペーストしたり、といった作業は過去のものとなる。
企業に義務付け
 四千社超の上場企業を好みの指標でスクリーニング(選別)し、オリジナルのランキングを個人が作成することも不可能ではなくなる。これまでなら、巨大なデータベースへのアクセスなしにはできなかった作業が、一気に進む。
 投資家に劇的な変化をもたらすのは、二〇〇八年四月からEDINET(有価証券報告書の電子開示システム)に導入されるXBRLだ。XBRLとはコンピューター言語の一種で、直訳すると「拡張可能な事業報告用の言語」。有報や半期報告書に記載する情報のうち、当面は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算書の四つについて、XBRL形式での提出が企業に義務づけられる。
 有報は既に電子化されてはいる。以前なら印刷された冊子を政府刊行物センターで買うか、関東財務局などに足を運んで閲覧するしかなかったことを思えば格段な進歩。だが、PDFファイルなど現在の開示システムはデータの加工・分析には向かない。
 来年四月以降、上場企業や投資ファンドなど約八千社がXBRLで財務データを提出することになる。東証も早ければ来年七月から決算短信をXBRLで開示する。将来的には五年分の財務データがEDINETで開示されるので、与信審査に財務データを活用する金融機関でも、データベースを自ら持つ必要はなくなるかもしれない。
 それぞれのデータは「タクソノミ」と呼ばれるひな型で定義され、日本語と英語の表示に加え、IDや勘定科目間の関係などが記される。データ自体が別々の場所にあっても、「自動車メーカーの二〇〇六年度のROE」などと指定すれば、容易に収集が可能だ。筑波大学大学院の白田佳子教授は「会計制度の変更などで勘定科目が新しくなっても、『セル(区画)がずれる』といった心配もなくなる」と話す。
日銀で実用化
 一足先にXBRLを実用化しているのが日本銀行だ。日銀は〇六年二月から、都銀や地銀など全国約五百の金融機関に月次のバランスシートなどをXBRLで報告させている。XBRL化でデータ間の関係が明確になり、入力ミスは一目瞭然(りょうぜん)。間違っている部分と内容が、日本語で表示される。
 日銀からすれば、データのチェックや訂正に何日もかかっていた作業がほとんど不要になった。集めたデータの正式リリースは締め切りの六日後だが、XBRL化で現在は「提出日の翌日には生データを金融機関にリリースしている」(金融機構局の和田芳明企画役)。XBRL化を一段と進めれば、日銀が公表している金融経済統計月報などの公表時期も早められる。
 インターネットの世界で、「グーグル革命」と呼ばれた検索技術の進歩は、我々の生活を一変させた。同じことが投資の世界でも起こりうる。優れたツールが開発されるかどうかが、XBRLの真価を発揮できるかどうかのカギを握る。

2007年07月17日