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情報開示新時代(下)日本の挑戦、世界が注目(日経金融新聞2007/07/18)

会計基準関係

会計基準変える可能性も
 「XBRL形式で作成するのはどの財務データか」「XBRLを作成するツールの入手方法は」――。金融庁が五月以降、十回にわたって開催したXBRL形式での有価証券報告書の提出を事前に体験できる「パイロット・プログラム」に関する説明会では、企業の経理担当者らから多数の質問が寄せられた。
業務効率を改善
 XBRLは二〇〇八年四月からEDINET(有価証券報告書の電子開示システム)に導入されるコンピューター言語。直訳すると「拡張可能な事業報告用の言語」という意味で、個人が決算情報を加工・分析する可能性を飛躍的に高めるという。
 八月末までのパイロット・プログラムには有価証券報告書提出会社の約一割に相当する約八百社が参加する。「予想以上に集まった」と金融庁の小林利典・開示業務参事官は手応えを感じている。
 XBRL導入で企業の開示はどう変わるのか。決算短信作成時には、これまで企業は短信一枚目の数値データを開示資料作成ソフトで入力していた。今後は「ソフトで項目名を選び、対応する数値を入力する。また財務諸表のデータは金融庁に提出するものを流用するので、大きくは変わらない」と東証上場部の吉田幸司課長は説明する。
 有価証券報告書作成時にはこれまでのPDFやHTML形式に加え、XBRL形式での財務諸表の提出が求められる。ただ、多くの企業はプロネクサスなど有価証券報告書の作成支援会社に依頼する事例も多いとみられる。支援会社に支払うコストは増える可能性があるが、「XBRLの知識がない経理担当者でも簡単に使えるソフトを作成した」(宝印刷の青木孝次取締役)など実務面での負担増は少なそうだ。
 もっとも、XBRLは情報開示向けのコンピューター言語だけでなく、内部統制や社内システムを変える可能性を秘める。ワコールホールディングスは、〇三年四月に既存の会計システムからXBRLを活用したシステムに移行。以前に比べ、「分社化や組織変更時に柔軟に対応できるなど業務効率が改善したほか、経理の人員体制のスリム化にも貢献した」という。
 またXBRLの導入は、会計基準にも影響を与える可能性もある。XBRL化で容易に言語を変換できるため、海外の投資家も日本企業の財務情報を得やすくなる。国境を超えた企業間比較が当たり前となれば、企業や業界が日本独自の開示を続けるのに十分な説明が求められるようになる。
 企業会計基準委員会(ASBJ)の関係者は「最終的に会計基準を一本化するのが目標となるが、まだ先の話。当面は国際基準とのコンバージェンス(共通化)を推進している」と話す。
比較しやすく
 一方、基準を無理に統一しなくても技術的な解決で比較可能性が高まるとの見方もある。野村資本市場研究所の淵田康之執行役は「基準が一つになると決定するまでに時間がかかり現実的ではない」と指摘する。
 今回のXBRL化は米証券取引委員会(SEC)から金融庁に専門的な質問が次々と寄せられるなど、世界から注目されている。ただ情報開示の方式が変わっても粉飾決算など不適切な開示を繰り返していては「仏作って魂入れず」だ。
 日本が国内外の投資家にとってより魅力的かつ先進的な市場として生き残るためにも、個々の企業が情報開示に真摯(しんし)に取り組み、「世界で最大規模の実験」(小林氏)を成功裏に終えることが必須の条件となる。

EDINETでの有価証券報告書提出の流れ  
勘定科目の選定  金融庁が提供するEDINETタクソノミ(ひな型)から勘定科目を選ぶ
↓  
企業別タクソノミの作成  各社の開示様式にあわせ勘定科目を選び、各社の財務諸表のひな型を作成する
↓  
報告書インスタンス(財務報告内容)の作成  企業別タクソノミに金額などの情報を加えて、財務諸表部分を完成させる
↓  
HTMLファイルの作成  提出書類のうち、財務諸表以外の部分をHTML形式で作成する
↓  
書類提出  EDINETのシステムにログインして書類を登録

2007年07月18日