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監査法人、監査役に選任権(日経新聞2007/07/21)

公認会計士の職業倫理

不正会計防止
独立性を強化
 法務省は、企業の不正会計を防止するための会社法改正案を国会に提出する方針を固めた。監査法人を選任したり報酬額を決定する権限を、取締役などの経営陣から監査役に移すことが柱。企業と監査法人とのなれ合い体質が、カネボウの粉飾決算事件などを招いたことから、企業監査の独立性を高める必要があると判断した。
法務省が会社法改正案
来年提出めざす
 法相は二〇〇八年春にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮り、早ければ同年の臨時国会に会社法改正案を提出する方針だ。法制審では併せて不正防止に向けた包括的な制度改革案を取りまとめる方向だ。
 監査役は取締役会に出席するなどして企業の違法業務を監視する役割を担う。原則として監査役の半数以上は、過去に会社または「子会社」の取締役などになったことがない社外取締役などで構成する必要がある。
 〇六年五月に施行した会社法では「取締役が会計監査人に支払うべき報酬などを定める場合は、監査役の同意を得なければならない」と規定、監査役に一定のチェック機能を持たせた。委員会設置会社では監査委員会が会計監査人の選任権を持ち、監査報酬を決める場合も監査委の同意が必要となる。
 だが、監査役を置く大半の企業では依然として監査の対象となる経営陣が会計監査人の選任や監査報酬の決定権を持つ。経営者が監査役を実質的に選任する現状では「監査役の権限を強めても、どれだけ監査の独立性を確保できるかは疑問だ」との見方も根強い。
 カネボウの粉飾決算事件では、負債を抱えたグループ会社を連結対象から外すなどした粉飾決算に関与した会計士が〇五年九月に逮捕された。以前から日本公認会計士協会は、会計監査人の選任や報酬の決定に関して、監査役の権限を強化するよう要望していた。法務省は監査役に決定権を付与する方向で調整。監査の独立性を高め、決算書の信頼性を向上させることを見込む。
 欧米諸国では監査役や監査委員会に監査法人の選任権を付与するケースが多い。米国の上場企業は監査委員会が監査法人を選任、欧州連合(EU)諸国でも監査委員会の提案や推薦を基に株主総会が選任する形が大勢だ。
 今年六月に成立した改正公認会計士法では、監査法人に所属する会計士が粉飾決算に加担した場合、監査報酬の一・五倍の課徴金を科すことができるようになった。法務省は罰則強化と併せて、監査の独立性を強めることにより、監査法人が厳しく企業の不正会計をチェックする体制をつくる必要があると判断した。

2007年07月21日