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監査の信頼回復これから(日経新聞2007/07/21)

中央青山:一時監査人

みすず、月末に解散
会計士・業務、移管は順調
 みすず監査法人(旧中央青山)が七月末で解散する。四大法人のひとつが相次ぐ監査不祥事で信頼を失って崩壊し、監査業界だけでなく産業界や資本市場にも大きな衝撃を与えた。監査先企業や会計士のほかの大手への異動は順調に進んでいるが、会計監査の信頼回復への道のりはまだ半ばだ。
 東京都内の数カ所の倉庫には十万箱にのぼる膨大な書類が厳重に保管されている。みすずが一千社を超す顧客企業に対して過去に手掛けた監査調書だ。監査調書はいわばみすずの歴史そのもの。監査調書の保管義務期間は十年間だ。
 ただ、企業と会計士が他の法人へ異動しても、中央青山時代の負の遺産の影は残る。会計士は解散してちりぢりになっても過去の監査に無限責任を負い続けるためだ。過去の監査について金融庁などから求められれば、すぐに監査調書を提出しなければならない。
 みすずの解体後は理事長ら五人が残る清算法人が、中央青山時代の訴訟案件を引き継ぐ。一九九七年に破綻した旧山一証券の粉飾を見抜けなかったとして株主が損害賠償を求めた訴訟は、現在も最高裁で係争中。経営破綻し一時国有化中の足利銀行が損害賠償を求めていた訴訟については、二日に和解が成立、みすずは二億五千万円の和解金を支払った。だが、同じく株主が損害賠償を求めている訴訟は決着していない。
 一方で他法人への監査業務の移管は急ピッチで進行中。会計士の半数近くを受け入れる新日本監査法人の場合、すでに十七日に前倒しで半数が移籍。解散日の七月三十一日の翌日付で残りの人員が移籍する。今年度はみすずの監査部門四つをそのまま法人内に抱える形とするが、来年には新日本の監査部門と統合・再編する計画だ。すでに新日本グループ共通の監査手法を学ぶ研修が始まった。
 監査先企業の移籍も進みつつある。新日本には二百八十社程度が移った。日本公認会計士協会が主導して相談窓口を設けた効果もあり、「市場を混乱させることもなく、かなりうまくいった」(監査法人トーマツの佐藤良二CEO)。
 みすず発の監査不信は、みすずの解体だけではぬぐいきれない。ただ、みすずに絡む粉飾事件は会計士に対する罰則強化など会計士法改正に結びついた。会計士協会も上場企業監査事務所登録制度を今年度から導入。品質管理が不備な事務所を自主的に公表する。「信頼回復への努力を徹底しなければ存在意義が問われる」(増田宏一会長)と業界団体の意識も変えた。
 監査法人を巡る規制や監査の厳格化で、従来陰に隠れていた不正会計が明るみに出るケースも増えてきている。会計監査の信頼回復にはみすず解体を教訓として市場関係者全体で取り組む必要がある。

2007年07月21日