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熟年世代の安全運転術(日経新聞2007/08/05)

その他

熟年世代の安全運転術
能力の過信は禁物
常用薬、視力チェックを
 退職後に増える自由な時間。自動車の運転ができると活動範囲が広がり、新しい楽しみもみつかる。しかし、年齢とともに危険が増すのも確かだ。お盆の帰省シーズンを前に、安心・安全なクルマ生活を考えてみよう。
憧れの「Z」購入
 横浜市に住む本城正博さん(68)は、数年前に日産自動車の「フェアレディZ」を購入した。テレビで新型の発売を知り、翌日には販売店に飛び込み契約書にサインした。
 本城さんにとって「Z」は、昔から憧れのクルマ。しかし、若いころは経済的に余裕がなく、懐具合が良くなってからは、家族全員が乗れることが絶対条件に。「二人乗りのスポーツカー」はありえない選択だったという。
 六十代になり、ようやく実現した夢。運転好きな本城さんの行動範囲は大きく広がった。年に二、三回、山梨県の小淵沢にあるライブハウスまでジャズを聴きに行ったり、夫婦で四国一周のドライブに出かけたり。今年は北海道を一周する予定だ。
 さらに、同じ「Z」を持つ仲間とオーナークラブを作り、一緒にツーリングに出かけるなど、交流の輪も。「外国暮らしが長かったため、定年退職後を一緒に過ごす仲間がいないのが悩みの種だった。一台のクルマが多くの人との出会いを運んでくれた」と本城さんは喜んでいる。
 もっとも、その楽しみも安全運転あってこその話。加齢とともに視力や判断力が衰え、運転中に危険を感じる場面も増えがちだ。
ヒヤリ体験多く
 「信号のない交差点を曲がる時、歩行者や自転車に乗っている人を見失い、はっとすることが増えた」
 「十分に確認しないまま交差点に入り、横から来た車と衝突しそうになった」
 「読書用の眼鏡をかけて運転し、対向車に気づかず接触事故を起こした」
 これらは中高年ドライバーの典型的なヒヤリ・ハット体験だ。
 交通事故総合分析センター(東京・千代田)が、高齢者が運転中に起こした事故を分析したところ、交差点での出合い頭事故や右折・左折時の事故が多いことがわかった。吉田伸一主任研究員は「加齢で注意力が落ちたり、体が硬くなり後方確認がおっくうになったりするのが原因ではないか」とみる。
 では、年を重ねても安全な運転を続ける秘訣は何か。まとめてみたのが安全運転六カ条だ。初心者のころの慎重さを忘れないことに加え、中高年になってからは定期的に視力をチェック。常用薬の副作用などを考慮することも欠かせない。そして、眠気を感じたらすぐに仮眠をとるなど、危険を避ける心がけが何より大事だ。
 運転歴四十八年の本城さんは事故を起こしたことはないが、渋滞に巻き込まれて追突事故に遭った経験があるという。そのため「Z」に乗り始めてからも、渋滞を避けてパーキングで休むなど、慎重な運転を心がけている。どんなスポーツカーでも、「無事是名車」というわけだ。
 シニアドライバーズスクールを開催している日本自動車連盟(JAF)の吉村俊哉主事は、「高齢ドライバーは二十年、三十年と運転してきたベテランが多く、運転に自信を持っている。しかし、現実には運転能力が低下していて、今までと同じことを漫然とやって事故を呼び込むこともある」と指摘する。
 もうすぐお盆の帰省シーズンを迎え、長距離運転をする機会も増える。体力の低下を認識し、基本動作を怠らず、余裕のある日程でドライブを楽しみたい。
車は老後の必需品
退職後の免許取得が増加
 最近は退職後に初めて運転免許を取得する人も増えているようだ。夫婦で旅行をしたり、ゴルフ場に通ったり。親の介護なども含め、車が必要になる場面は少なくない。
 そんなニーズに対応して、自動車運転の教習所も中高年向けの教習プランを拡充している。
 運転合宿予約センターを運営する大沢コムズ(東京・千代田)は、「熟年合宿プラン」を用意。五十六歳から六十四歳くらいを対象に合宿形式で免許取得を指導する。
 若者は最短二週間程度で免許を取得できるが、中高年は一カ月以内の取得が目標。「高齢者でも集中的に教習を受ければ、確実に免許が取得できる」(大沢コムズの大澤善明代表)という。
 合宿中は温泉地のホテルや民宿に宿泊し、観光気分を味わえるよう配慮しているのも、中高年向けならでは。
 滝口秀雄さん(57)は昨年「熟年合宿プラン」に参加し、免許を取得した。「退職後の生活は自動車の運転ができるのとそうでないとでは、活動範囲や生活スタイルに大きな差が出る。時間がかかっても合格を保証してくれるので助かった」と話している。

2007年08月05日