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会計基準、日米欧で共通化(日経新聞2007/08/09)

会計基準関係

会計基準、日米欧で共通化
会計基準委発表、11年6月末までに
M&Aルールなど変更
 企業会計基準委員会(ASBJ)は八日、二〇一一年六月末までに国際会計基準との違いを解消すると正式発表した。最大の違いだったM&A(合併・買収)に関する会計ルールなどを変更し、日本と米国、欧州の会計基準がほぼ共通になる。日本企業の海外での資金調達やM&Aを活用した事業拡大を後押しする。
 国際会計基準理事会(IASB)と全面共通化で合意した。まず〇八年までに棚卸し資産の評価方法や工事会計基準などの共通化、企業合併時の会計処理として認めてきた簿価方式(持ち分プーリング法)の廃止などを実施。のれん代の定期償却廃止は、一一年六月末までの差異解消を目標に検討に入る。
 米国は〇九年までに国際会計基準との主要な違いを解消する。日米欧がほぼ共通化することになる。
 これまで日本では対等合併を重視する風潮が強く、合併時に貸借対照表を簿価のままで合算する持ち分プーリング法を存続させる意見が出ていた。だが、M&Aの増加を背景に「市場環境や経営者の考えが変わってきた」(ASBJの西川郁生委員長)と判断、廃止に向けて検討する。
 基準の共通化は企業のM&A戦略や業績に影響を与えそうだ。注目されるのは企業買収の際に生じるのれん代の処理方法だ。日本ではのれん代を最大二十年間で償却して費用計上することを義務付けているが、国際会計基準では価値が目減りした場合の減損処理だけを認めている。
 〇六年六月に英ピルキントンを買収した日本板硝子は、〇七年三月期にのれん代などの償却額百六十三億円を計上した。定期償却が不要になれば、利益が上向くことになる。一方、のれん代の処理が減損処理だけに一本化されると、買収した事業の収益力が低下したときに、巨額の損失が発生する場合がある。
国際会計基準との共通化をめざす主な項目
▼2008年まで
・在外子会社との会計基準統一 現地の会計基準ではなく、日本基準もしくは国際基準(米国基準)で連結させる
・棚卸し資産の評価方法 国際基準に合わせ、原則として低価法を義務付ける
・持ち分プーリング法(簿価方式)廃止 合併会計処理のパーチェス法(時価方式)への一本化を目指し07年中に論点整理
・工事進行基準への統一 土木工事などの売り上げ計上ルールを完成基準から工事の進ちょく度に応じたルールに原則統一
▼2011年まで
・のれん代の定期償却廃止 国際基準に合わせ、企業買収などで生じるのれん代の定期償却を廃止し、減損処理だけにすることを検討

会計基準、日米欧で共通化
日本、孤立化を回避、発言力の向上課題
 企業会計基準委員会が二〇一一年までの全面共通化を表明したのは、会計基準の世界的統一に向けた日本の前向きな姿勢を示すのが狙いだ。国際会計基準作りは欧米主導の流れが定着しており、日本がこのまま独自の主張を貫いても孤立化を回避できないと判断した。
 国際会計基準は、欧州連合(EU)が〇五年から域内上場企業に採用したことで急速に普及。中国が今年から上場企業に国際基準に準拠したルールの利用を義務付けたほか、韓国やインドも一一年からの利用を表明した。国際会計基準理事会(IASB)が呼びかけた結果、世界百カ国以上が利用を表明するまでに広がっている。
 日本は欧米とともにIASBの運営資金を負担しているが、十四人の理事会メンバーのうち日本人は一人だけ。日本の主張はほとんど反映されてこなかった。会計基準委は今回の合意をきっかけにIASBとの関係を強化し、長期的な会計基準作成で日本の意見を反映できる体制づくりを目指す。
 特に日本側は、欧米主導で検討が進んでいる財務諸表の大胆な改革に懸念を示している。損益計算書の「当期純利益」を廃止し、貸借対照表の時価の増減をすべて期間損益に取り込む「包括利益」に切り替える内容。株式を売って利益を押し上げるといったことは困難になる。
 だが、包括利益は、持ち合い株式や土地の含み損益で期間損益が大きく変動するため、産業界や投資家からは「本業のもうけがわかりにくくなる」との批判も強い。
 こうした世界での基準作りの流れに、日本がどこまで自らの主張を反映させられるかが、今後の課題となる。

2007年08月09日