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会計基準の共通化試される日本(上)(日経新聞2007/09/06)

会計基準関係

孤立化回避へ方針転換、欧米に抗する発言力課題
 日本の企業会計基準委員会は八月、国際会計基準理事会(IASB)と二〇一一年六月末までに会計基準を全面的に共通化することで合意した。米国に比べ遅れていた国際基準との共通化を進め、世界の会計の中で孤立することを回避する。方針転換の背景や基準共通化による日本企業への影響を探る。
 「第二次世界大戦前の国際連盟脱退のように、国際社会から脱退するのか」「いまさら鎖国するわけにもいかない」。七月二十五日、会計基準委、日本経団連、金融庁などの幹部が都内のホテルに集まり、来日を控えたIASBのデービッド・トウィーディー議長への対応を協議した。
 一部異論もあったが、日本基準と国際基準の差異解消を図ることで意見が一致。会計基準委の西川郁生委員長に対応を一任した。日本が共通化を加速する方針に転換した瞬間だった。
 八月八日、会計基準委とIASBは一一年六月末までに会計基準を共通化させる「東京合意」を公表した。IASBの最大の狙いは、日本側に共通化の期限を明示させることにあり、日本はそれに応じた。
 一九九七年以降、日本は「会計ビッグバン」と呼ばれる会計の国際化に着手し、企業会計の透明性を高めてきた。第一弾の改革が一巡したところに第二の変革の波がやって来た。それが海外との会計基準の共通化(コンバージェンス)だ。
 〇二年十月にIASBと米財務会計基準審議会(FASB)が、相互に会計基準の共通化を目指す「ノーウォーク合意」を公表。そこから遅れること二年余。日本も〇五年一月、基準共通化を最終目標としてIASBと協議を始めた。この震源地は欧州にある。
 欧州連合(EU)は〇五年、域内上場企業に国際基準の強制適用を開始。さらに欧州で資金調達する域外企業に対し、〇九年から国際基準またはこれと同等の会計基準の適用を義務づけ、同等か否かは欧州側が評価する方針を打ち出した。
 国際基準との相違を解消しないと、欧州で資金調達する企業は追加の情報開示を迫られ、事務負担が増す。「会計の二〇〇九年問題」と呼ばれるものだ。
 日本は自国ルールへのこだわりから共通化が遅れた。国際基準はすでに世界で百カ国以上が採用。米国と国際基準が接近するなかで、日本には共通化を速める以外に選択肢はなくなった。
 今回の「東京合意」は危うさもはらむ。共通化といっても、欧米の発言力が強いIASBで、会計基準作りでどこまで影響力を持てるかは不透明。これまでもIASBに理事を送りこみ予算の約二割を拠出してきたが、日本の主張は通りにくかった経緯がある。「国際基準を丸のみせざるをえないのでは」とみる関係者もいる。
 「日本企業が日本国内で国際基準を使えるようにするとの文面を盛り込めないか」。今回の交渉の中で、IASBのトウィーディー議長は日本に揺さぶりをかけた。
 日本側が難色を示すと、IASBはこの要求を取り下げたが、次の狙いはここにあるとの見方が広がった。米国では、証券取引委員会(SEC)が今年六月、米国で上場する外国企業に対して、〇八年から国際基準に基づく決算書を認める方針を決めている。
 日本では現在、米国上場など一定要件を満たせば、米国基準で決算書を作成することを認めている。将来的に国際基準での決算書作成を容認すれば、微妙に異なる三つの基準が併存することになり、比較可能性の面では問題が残る。
 企業会計はその国の文化や商慣行を反映しており、独自性を尊重すべきだとの声も根強い。だが基準共通化で合意した以上、今後は国際的な議論に積極的に取り組み、日本基準の主張を反映させることが重要になる。

【表】日本の会計は国際基準への対応を迫られている    
  第一期  第二期
年代  1997年~2004年  2005年~
設定主体  企業会計審議会(金融庁の諮問機関)  企業会計基準委員会(民間組織)
    
背景  企業・資本市場の国際化  EUの国際基準導入
狙い  会計基準の国際的調和  国際基準との差異解消
導入した基準  連結主体の情報開示金融商品の時価会計固定資産の減損会計  ストックオプション会計棚卸し資産の評価会計在外子会社の会計処理

2007年09月06日