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会計基準の共通化試される日本(下)(日経新聞2007/09/08)

会計基準関係

 二〇一一年までに国際会計基準との全面共通化を決めた日本の会計基準。今後の見通しや課題を関係者に聞いた。

純利益廃止には賛成せず
日本経団連企業会計部会長八木良樹氏
 ――今回の合意をどうとらえているか。
 「ようやく緒についたという感じだ。まだ先は長い。二〇一一年という目標に至るまでやるべきことがたくさんある」
 「のれん代の処理や年金会計、時価会計の適用範囲、純利益の廃止問題など議論すべき点は山積している。基準の設定団体だけでなく、規制当局や産業界とも連携しながら議論を進めていくことが重要だ」
 ――今後の論点は。
 「のれん代の処理は日本と欧米の経営環境の違いも考慮してほしい。日本ではいったん買収したら長期間保有するのが前提のため、のれん代を毎年償却するやり方が理にかなっている。変えるなら税制も含めて議論しなくてはならない」
 「純利益を廃止し、純資産の変動を利益とする『包括利益』へ一本化する議論には賛成できない。包括利益を使うにしてもオペレーションの結果である純利益も合わせて表示すべきだ。一本化すると投資家にもわかりにくくなるはずだ」
 ――会計基準作りはどうあるべきか。
 「理屈だけのルールになってはいけない。各国の会計基準は慣行や実務の延長上に成り立ってきたもので、意義や重みがある。実務的な視点から離れれば使い勝手が悪くなり、それは基準とは言えない」

税務や法律との調整カギ
日本公認会計士協会前会長藤沼亜起氏
 ――全面共通化をどう評価するか。
 「高く評価している。企業会計基準委員会は従来かなり保守的だったが、西川郁生委員長に交代して大きく動いた。日本に対する世界のイメージも変わるだろう」
 「米国は自国企業にも国際基準を利用させるか検討に入っており、日米欧という主要な資本市場の基準が歩み寄ることは大きな前進だ。中国やインドなどの新興国にも国際基準の利用は広がっているが、厳格に適用しているかどうかといった点でまだ課題も多い」
 ――日本基準は欧州連合(EU)に国際基準と同等と認められるか。
 「EU域内の上場企業と実質的に同じ基準を使うことになるので、基本的には前向きに評価してもらえるのではないか。ただ、国際基準と共通化させる過程で、あまり日本的な部分を残し過ぎないよう注意すべきだ」
 ――今後の課題は。
 「日本の会計基準は税務や法律との調整が難しい面がある。例えば、連結だけを国際基準と共通化し、単独はこれまでの日本基準でいくという考え方もあるが、法律上の開示制度の中で、二つの決算書をどう位置づけるのか課題も多い。こうした問題について会計基準委が率先して意見を発信し、日本全体として会計基準の環境整備を進める必要がある」

細部の調整に時間も
 当面の課題は「会計の二〇〇九年問題」への対応だ。欧州連合(EU)は欧州で資金調達する域外企業に対し、〇九年から国際基準またはこれと同等の会計基準の適用を義務づける方針で、〇八年中に欧州側が同等か否かを評価する予定。対象は二十六項目。これら以外の差異も一一年六月末までに解消する必要がある。焦点はのれん代の規則償却廃止だ。国際基準では、純利益の廃止も議論されている。共通化という「総論」で合意したものの、こうした「各論」の細部では調整に時間がかかる可能性もある。
共通化を目指す主な項目
▼2008年まで
○合併会計処理で持ち分プーリング法(簿価方式)を廃止し、パーチェス法(時価方式)に一本化へ
▼2011年まで
○のれん代の規則償却を廃止し、減損処理のみにすることを検討
▼2011年以降の検討課題
○当期純利益を廃止し、純資産の変動を利益とする「包括利益」に切り替えを検討

2007年09月08日