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四半期業績「進ちょく率」カギ(日経新聞2007/09/23)

相場観

業績上方修正銘柄、どうやって見つける?
 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけに、荒い値動きが続く東京株式市場。ただ中期的に株価を左右するのは業績だ。二〇〇七年四―六月期の四半期業績開示の結果をもとに、業績予想の上方修正が期待できる銘柄の選び方を探った。
年間の利益予想 達成割合で判断
 上方修正の有無を測るには、四―六月期実績の進ちょく率(通期予想に対し何割の利益を稼ぎ出したか)と、通期の業績予想の修正の有無に着目するのが効果的だ。「四―六月期決算の段階で通期予想を上方修正し、進ちょく率が前年同期を上回っている銘柄には、再度、上方修正する傾向が強い」と大和総研投資戦略部のチーフクオンツアナリスト、吉野貴晶氏は語る。
 新年度が始まって三カ月しか経過していない段階での上方修正は、その企業の収益環境の良さと自信の大きさを示す。その上、数値面での裏付けとなる進ちょく率が高ければ申し分なし。吉野氏によると、これら二つの条件がそろった場合、七割以上の企業が中間決算の段階で再度通期予想を上方修正した(〇六年実績、表Aの右下の数字)。
 例えば欧州、中国などでエアコン販売が好調なダイキン工業。〇七年四―六月期の業績発表時に、通期の連結経常利益の予想を八百八十億円から千九十億円に上方修正した。上方修正後の通期予想から算出した進ちょく率は四一・四%と、前年同期よりも一五ポイント近く上昇した。証券会社のアナリストの今期の予想経常利益の平均値は千百五十三億円と、会社予想を上回り、期待感の高さを示す。
株価上がりやすく
 注目したいのは、再度の上方修正が期待できる銘柄の株価上昇率が相対的に高い点だ。グラフBは二〇〇六年の第一四半期の業績開示後の株価の推移を「業績修正の有無」と「前年同期と比べた進ちょく率の上昇・低下」で分類したもの。業績予想を上方修正し、しかも進ちょく率が上昇した銘柄は最も株価が上昇したことが分かる。
 前述のダイキン工業の場合も、四―六月期の業績開示後の株価上昇率は二割前後に達し、市場全体の動きと逆行している。「上方修正・高進ちょく率銘柄は、中間決算発表がある修正後六十日あたりまで高い投資成果が得られる可能性が高い」(吉野氏)
 表Aにはないが、通期の業績予想を据え置いても、中間期の予想を上方修正した銘柄は期待が持てる。「下期の経営環境によほどの不安材料がない限り、通期の予想もいずれ上方修正される可能性が高い」(トレーダーズ・アンド・カンパニーの本吉亮氏)
 例えば三菱電機。四―六月期の進ちょく率が前年同期よりも上昇し、〇七年九月中間期の連結純利益の予想額を二百三十億円上積みしたのに対し、通期予想は据え置いた。電機メーカーは年後半にかけて収益を積み上げていく傾向が強いため、今後、どこかのタイミングでの上方修正が期待されている。
 三菱電機以外にも、デンソー、住友不動産、イビデンなど中間期の予想のみを上方修正した企業は意外に多い。決算短信の「経営成績」などを参考に、収益環境に大きな変化がないか確認した上で、“上方修正期待銘柄”が埋もれていないか確認したい。
 輸出関連の上方修正候補の場合、業績予想の前提としている為替レートも必ず確認したい。前提レートより円高で推移すれば利益の圧迫要因になるためだ。サブプライムローン問題が米国経済に悪影響を与えると、円高が進む懸念も出てくる。
 今年も途中までは円安基調が続いたためホンダ、キヤノンのように〇七年四―六月期の業績開示で、想定レートを円安方向に修正する企業も多かった。直近の不安定な為替相場の動きを見る限り、想定レートを慎重に円高の水準で見積もっている企業の方が安心感は高い。円高が業績に与える影響度も業種により異なることから要注意だ。
チャートも点検
 主要輸出企業の想定為替レートを比較してみた場合、相対的に慎重(円高水準)だといえるのは対ドルで一ドル=一一〇円(京セラなど)、対ユーロで一ユーロ=一四〇円(トプコンなど)前後。一ドル=一一五円前後より円安水準の想定が多い主要自動車メーカーの中では、スズキは一一二円と慎重だ。このように輸出企業の場合は、予想の前提にも気を配りたい。
 銘柄がある程度絞り込めてくれば、後はタイミングを測りたい。中長期的な株価のトレンドを示す十三週、二十六週移動平均線が上向きであれば、株価が上昇基調にあることが分かる。目先の株価急落で十三週移動平均を大幅に下回っていれば、「割安感が強く買い場」と判断する市場関係者が多い。

2007年09月23日