2010年02月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

新興国開拓で収益拡大、トラック・建機・商社、業績上方修正へ(日経新聞2007/10/20)

材料

 新興国の需要を取り込んだ企業が収益を伸ばしている。日野自動車やいすゞ自動車は日米のトラック販売低迷をアジア、中南米などで補い、二〇〇八年三月期業績が期初計画を上回る見通し。大手商社や建設機械も新興国需要が引っ張る。内需が力強さを欠き、米景気に減速懸念が広がる中、新興国を中心に海外売上高の比率を高められる企業の高成長が続きそうだ。(海外売上高は3面「きょうのことば」参照)
 国内市場の低迷を受けトラック業界は海外に活路を求めている。特に需要が活発なのが資源関連国だ。日野自動車は中南米や中近東、アジアで販売が予想以上に拡大。北米は期初の計画を約二五%下回るが、今期の連結営業利益は前期比九%増の四百億円前後と、従来予想を上回る見通し。
 いすゞも中東・アフリカなどを中心に新興国需要が寄与する。九月中間期の連結営業利益は従来予想から三十億円程度拡大して四百七十億円前後を確保したもよう。
 国際通貨基金(IMF)によると〇八年の実質経済成長率は米が一・九%に対し中国は一〇%、インドは八・四%。新興国主導の世界経済の成長は今後も続く見通し。原油高や円高リスクなど懸念材料がくすぶるが、新興国の成長が業績の下支え要因になる。
 いち早く新興国での足場を築いた企業の好調が目立つ。他社に先駆けインド、ハンガリーに進出したスズキは「過去にまいた種が実を結び出した」(鈴木修会長)。一%増の千三百四十億円と見込んだ〇八年三月期の連結営業利益は約百億円前後膨らむ公算が大きい。
 コマツは一九九〇年代に中国、インドで現地生産を始めた。国内・米州以外の売上高比率は前期に四六%と十年前に比べ約二倍。今期の連結営業利益は七月に上方修正した数値を上回りそうだ。
 三井物産はインドネシアの二輪車販売金融事業などが好調。資源価格上昇の恩恵も受け、今期の純利益は前期比二三%増の三千七百億円とみていたが数百億円上回り、初めて四千億円を超す公算が大きい。丸紅も中近東や東南アジアなど海外の発電事業が順調。今期の連結純利益は二割強増の千五百億円前後と五期連続最高が見込まれる。
 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を機に、米景気の先行きに減速感が出ている。だが「世界経済が多極化し、業績への影響は限られる」(野村証券金融経済研究所の海津政信・経営役)との見方が多い。
 主要五百社の「欧州・アジア・その他地域」の売上高比率は前期に二二・九%と、四年前の一七・二%から上昇が続く。一方、インテルの海外売上高比率が約八五%に達するなど、既に米国の有力企業も本国以外で稼ぐ構図が鮮明。新興国の需要を巡る競争は厳しくなっている。北京五輪後はアジアの経済動向も不透明で、リスクを踏まえた戦略が問われそうだ。

2007年10月20日