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来年度税制改正、減価償却、大幅に簡素化(日経新聞2007/11/19)

法人税

減価償却、大幅に簡素化
法定耐用年数390区分を50に
税務コスト減
来年度税制改正
 政府は企業の減価償却の仕組みを二〇〇八年度から大幅に簡素化する。製造機械や装置の償却期間を示す法定耐用年数の区分けを約四十年ぶりに見直し、三百九十の区分を一業種一つ、合計五十に集約する。海外に比べ区分が細かく税務計算が煩雑という産業界の不満に応え、米国並みに簡素にする。企業の税務コストを減らし、国際競争力の強化につなげる。(減価償却は3面「きょうのことば」参照)
企業の国際競争力強化
 財務省や総務省、経済産業省など関係省庁や与党の税制調査会で詳細を詰め、来年度税制改正での実現を目指す。
 減価償却は企業の製造設備や装置などの資産について、毎年の価値の減少分を損金扱いして所得から差し引く仕組み。償却額が大きくなればその年度の企業の税負担は軽くなる。償却年数(耐用年数)は設備などの種類ごとに税法で定めている。
 〇七年度税制改正では、従来は投資額の原則九五%までだった減価償却を全額できるようにするなどの見直しを実施したが、〇八年度は一九六四年以来の法定耐用年数の全面改定に踏み切る。
 法定耐用年数は機械や装置の種類によって三百九十の区分に細分化している。米国は四十八、韓国は二十六で、日本は海外に比べ圧倒的に複雑な仕組みになっている。
 例えば「化学品設備」は韓国では一つの区分だが、日本は「リン酸製造設備」や「アンモニア製造設備」など約百区分もあり、耐用年数も三―十三年とバラバラ。この結果、日本企業は、保有設備の償却費用で複雑な計算を強いられている。
 今回の改定では、原則として一業種一区分に集約する。繊維業は「紡績設備」「合成繊維製造設備」など二十二区分あるが、新制度では「繊維工業」として耐用年数を一本化する。
 設備の耐用年数が一本化されれば、企業が税務にかける事務作業やシステムなどの費用負担が軽くなる。従来は、新たな機械や装置が開発された場合や、異なる耐用年数を持つ機械を組み合わせた複合機などが登場した場合は、どの耐用年数の区分に入れるか税務当局と擦り合わせる必要が生じていた。業種ごとに耐用年数が一本になれば、こうした手間も省ける。
 新区分の耐用年数は今後詰めるが、現行の法定年数の平均値や企業の実際の使用年数をもとに設定する方針だ。全体としては来年度の税収が大きく増減しないように「税収中立」で調整する。
 ただ設備によっては耐用年数が現行制度に比べ大きく変わる可能性がある。制度変更で償却期間が延びれば毎年損金算入できる金額が小さくなり、単年度ベースでの企業の税負担が増す。現行制度で耐用年数が極端に短い一部の製品は、特例枠を設けて新区分で定めた年数よりも短い期間で償却できるようにして、税負担が急増しないようにする。
法定耐用年数の新区分案  
主 な新区分  現行区分
食料品製造業  食肉加工(9)
化学調味料製造(7)  
合計28区分(6―25)  
繊維工業  紡績(10)
レース製造(12)  
合計22区分(3―15)  
化学工業  アンモニア製造(9)
試薬製造(7)  
合計98区分(3―13)  
金属製品製造業  金属熱処理用(10)
農業用機具製造(12)  
合計25区分(7―15)  
窯業・土石製品製造業  板ガラス製造(14)
セメント製造(13)  
合計17区分(3―15)  
(注)カッコ内は法定耐用年数  

減価償却(きょうのことば)
▽…工場の建物や機械など、使っているうちに古くなる資産について、価値の減少分を複数年にわたって企業の各事業年度の費用として計上できる制度。企業は法人税法で定められた金額の範囲内で償却費を損金(経費)として課税所得から差し引くことができる。
▽…各資産を何年かけて償却するかは「法定耐用年数」として定められている。液晶製造設備など一部のハイテク機器は日本の法定耐用年数が国際的に長かったため、2007年度の税制改正で短縮された。償却期間が短くなれば事業年度ごとに計上できる損金が増えるため、投資直後の税負担が軽くなる効果がある。
法定耐用年数の国際比較      
(※は2007年度改正で短縮)      
  日本  米国  韓国
自動車製造用プレス機械  10年  7年  8年
液晶パネル製造設備  5年 ※  5年  4年
NC旋盤  10年  7年  8年

2007年11月19日