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内部統制報告で新興企業、「対応間に合う」6割どまり(日経新聞2007/12/18)

内部統制

「対応間に合う」6割どまり
内部統制報告で新興企業、本社調査
 決算の信頼度を高めるため二〇〇八年度から上場企業に義務付けられる「内部統制報告制度」について、「対応が間に合う」とみている新興企業は全体の六割強にとどまることが日本経済新聞社の調査で分かった。新制度に対する戸惑いに加え、人材や費用などもネックになっている。新興企業は不祥事や情報開示の不備などから投資家の不信感が根強いだけに、早急な社内体制の整備が求められそうだ。
人材や費用がネック
早急な体制整備必要に
 内部統制への対応や進ちょく状況を聞いたところ、「作業を進めている」と答えたのは全体の九割強だった。しかし「対象の決算期に十分間に合う」は六三%で、「間に合うかどうか分からない」「間に合いそうにない」が合わせて二八%。「作業にまだ着手していない」も八%にのぼった。
 内部統制に不備があっても必ずしも決算書が不正確というわけではない。ただ投資家の信頼が低下し、株価下落などにつながる可能性がある。
 作業の進み具合では、ほぼ準備が終わった段階といえる「業務フローの文書化を終えた」が合計二一%。情報システム構築のインフォコムは「自社商品やコンサルタントを使い文書化を終えた」という。IT(情報技術)化支援のテレウェイヴは「四月から始めて一応、文書化を終えた。来年には約十人で細部を見直す」としている。
 内部統制対応の課題(複数回答)で最も多かったのは「どの程度まで進めれば万全かわからない」で五四%。初の制度で前例がないことに不安を感じていることがうかがえる。次いで「社内の人材が足りない」(五一%)、「費用がかかり過ぎる」(四一%)が続いた。制度導入の総費用は千一万―三千万円以下が三七%で最も多かった。
 作業にまだ着手していないという不動産会社は「どこまでやればいいか苦慮している。作業の進め方について監査法人と擦り合わせを始めたところ」という。
 監査をする会計監査人は企業に対し、ぶっつけ本番にならないよう助言している。あずさ監査法人の公認会計士、森居達郎氏は「フローチャートなどの文書化が終わっていなくても経営者は一度、〇八年三月期について報告書をまとめ、評価してほしい」と話す。
情報開示の強化
「支持するが負担」57%
作業煩雑で業務圧迫
 上場企業に対しては内部統制だけでなく、情報開示の強化を求める動きが一段と強まっている。調査では投資家保護や公正な株価形成のため、積極的な情報開示については九割強の企業が支持した。ただ「趣旨は支持するが負担を感じる」と回答した企業が五七%を占め、「全面的に支持し負担を感じることもない」(三六%)を上回った。
 負担を感じる理由(複数回答)については「作業が煩雑で通常業務を圧迫している」(七九%)が最も多かった。新興企業にはIR(投資家向け広報)専従の担当者がいない会社も多い。携帯電話サイト運営のナノ・メディアは「経営企画部門が日常業務の合間に投資家の問い合わせに対応しており、人も時間も割かれてしまう」という。
 「情報開示を充実させても公正な株価形成につながるとは思わない」との回答も二八%が選択した。あるインターネット関連企業は「大量の情報を一方通行で出すと、余計に投資家を惑わすのではないか」と話す。
 新興企業は大口顧客に収益を依存する例も多い。「取引条件の変更で業績予想が変動した場合、開示を求められても契約で公にできない」(通信機器開発会社)と、投資家と顧客の板挟みに苦慮する声も聞かれた。
 ライブドア事件以降、証券取引所は市場制度改革に取り組んでいる。一定期間を経過しても成長できない企業の上場廃止などを検討しているが、廃止基準の強化については「現状維持がよい」(五六%)が多い。「株主への影響が大きい」と危惧する見方が強いほか、業績などは「将来改善する余地がある」と“温情”を求める声もある。

▼内部統制報告制度
 金融商品取引法に基づき、全上場企業を対象に二〇〇八年四月以降に始まる決算期から導入される。経営者は正しい決算書を作成するための手続きやルールを明文化し、毎期点検して評価結果を示した内部統制報告書を作成。公認会計士が適正かどうか監査する。報告書は投資家に開示される。社内体制の整備を経営者に義務付け、粉飾などを防ぐのが狙い。

調査の方法
 日経リサーチの協力を得て「新興上場企業の経営動向調査」と題したアンケートを郵送した。対象は二〇〇〇年以降にジャスダックやマザーズなど六つの新興株市場に十月二十五日までに上場した合計八百四十七社。回答は二百六十五社(三一%)。

2007年12月18日