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タスコ迷走する資本政策(上)(日経新聞2007/12/19)

不適切な会計処理

タスコ迷走する資本政策(上)
個人株主置き去り――度重なる資金調達、低迷は続く
 外食チェーンのタスコシステムは十八日の臨時株主総会で、投資会社への新株有利発行と株式併合を正式決定した。既存株主が不利益を被ると批判の多かった調達手法で、ジャスダック証券取引所も異例の注意喚起措置を取った案件だった。迷走するタスコの資本政策に迫った。
 「(少数)株主が権利を失うのは仕方ないという経営のあり方には疑問を感じます」。札幌市内のホテルで開いたタスコの臨時株主総会。個人株主から質問が相次いだ。
 タスコは三十八億円を調達するため、複数の投資会社に新株予約権などを発行する。その規模は現在の発行済み株式数の二倍に当たる九十七万五千株だ。しかし定款上の発行可能株数は八十七万株。このままでは予約権の権利行使ができず資金を確保できない。そこで来年二月一日付で十株を一株に株式併合する議案を株主総会に諮った。
8割が10株未満
 株式併合には発行株数を減らす分、株価を押し上げる効果がある。タスコの場合、併合後で株数が十分の一になるため、発行可能株数の問題は解決する。しかし保有株が十株未満の株主は一大事だ。会社法施行で一株に満たない「端株」の制度がなくなったためだ。
 現在九株以下しか持たない株主は、そのまま放置すれば株主としての権利を失う。株式併合後も株主の立場を維持するには、一月二十五日までに十の整数倍単位まで株式を買い増す必要がある。そんな中途半端な立場に置かれた株主は実に全体の八一%に当たる三万七千三十七人。そのほとんどが個人株主だ。
 一方、予約権の行使価格は四千円。十八日終値を二割近く下回り、投資会社に相当有利な条件だ。このためジャスダックはタスコが十一月十六日に計画を発表すると、即座に「公表措置」を実施。「市場に混乱をもたらすおそれがある」と投資家に注意喚起した。株主が反発するのも無理はなかった。
 「会社の再生を支えてくれる安定株主づくりが不可欠だった」。山本健一郎社長は強調する。今回の調達で債務超過(二〇〇七年六月中間期末で約十九億円)の解消にメドをつける意味は確かに大きい。だが市場の視線は依然厳しいままだ。
 札幌市が地盤のタスコは〇一年九月に上場。ベンチャー・リンクの支援を得て、そば居酒屋「高田屋」などの全国展開を加速する。当時は「外食の勝ち組」ともてはやされ、手厚い株主優待で個人に人気の銘柄だった。
大量出店、裏目に
 だが、強気の大量出店が裏目に出る。上場三期目の〇三年十二月期は最終赤字に転落。その後、転換社債や新株予約権を割り当てて資金を引き出した投資会社はゆうに十を超えるが、経営は安定しなかった。
 〇五年十月には企業再生のジェイ・ブリッジの出資を受け入れた。NOVAへの支援で有名になったジー・コミュニケーション(名古屋市)へは中華業態「暖中」など複数事業を売却した。
 〇七年六月には、二年前に割り当てた大株主の新株転売の報告が適切でなかったとし、ジャスダックが情報管理体制の改善報告書を要求。いったん発表した増資計画が四度も失権するなど、投資家を惑わすことも度々だった。結果的に株数は上場時の七十倍に膨れあがり、株価は〇一年十二月に付けた最高値比で実質一%にも満たない。
 今回の有利発行で新株を引き受ける産業再生ファンド投資事業組合(横浜市)は、十一月十二日に組成されたばかり。運用額は二百億円と大規模だが、投資実績はなく、タスコが初案件という。「コメントは一切差し控えたい」(坂本博則業務執行組合員)と出方は不明だが、新株を即座に転売するだけで利益を得られることは確かだ。
 「これからは攻めの経営に打って出ます」。十八日の株主総会で山本社長は業績回復に自信を示した。しかし、実現してもその恩恵を受けられるのは一部の株主にすぎない。六年前からタスコファンという札幌の女性株主(76)は総会後につぶやいた。「議長(山本社長)の話を聞いて絶望しました」。現在持ち株は二株。百万円を超える損失を抱えるという。
【表】タスコの主な資本政策  
払込日  資本政策
05/5/27  ジー・コミュニケーションなどへ第三者割当増資
  10/28  ジェイ・ブリッジへ新株予約権
  
06/10/25  ソレイユキャピタルなどへCB
  12/14  店舗再生ファンドへ第三者割当増資
07/5/2  NK2事業再生投資事業有限責任組合へCB
  5/17  チャレンジ・ジャパン1号投資事業組合へ第三者割当増資
  12/19  産業再生ファンド投資事業組合へ第三者割当増資
サンライフ・インベストメントなどへ新株予約権  
(注)CB(転換社債)は株価で条件が変わる転換社債(MSCB)も含む  

2007年12月19日