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公認会計士試験の合格者急増(日経新聞2007/12/20)

公認会計士の職業倫理

公認会計士試験の合格者急増
監査の品質維持課題に
教育体制の整備など急務
 二〇〇七年の公認会計士試験合格者数が実質二倍に増え、会計監査の品質をどのように維持するのか焦点となり始めた。人手不足だった業界に人材が一気に流入したものの、教育体制の整備は遅れ気味。資本市場の国際化が求められるなか、粉飾決算を見抜く優れた会計士をいかに育てるのか課題も多い。
 五日に都内で開いた日本公認会計士協会主催の研修所入所記念パーティー。昨年の倍の約千八百人が押しかけ、会場に入りきれずに廊下で祝杯を挙げる合格者も続出した。理系大学院修了で合格した東野大介さん(25)は「(制度が)変わったおかげで合格できたところもある」と苦笑。ある女性合格者は「甘やかされているのではないかと少し不安」と語った。
 「こんなに多いとは意外だった」。監査法人トーマツの川上豊・人事本部長は驚いたという。今年の合格者数は、制度変更に伴う過渡期組を除いた実質合格者数が二千六百九十五人とほぼ倍増。業界が想定した千八百人程度を大きく上回った。
 当初、大手監査法人は厳しい人材獲得競争を懸念して「青田買い」に奔走。初任給も昨年の年俸四百八十万円程度から今年は五百五十万―六百万円に引き上げた。大手法人の採用担当者は「大量合格が分かっていたらこんなに報酬を上げなかった」とため息をつく。
 金融庁は会計士数拡大をめざし、〇六年から一発合格だけだった試験制度を刷新。高得点を取った論文科目は二年間その科目の受験を免除する「科目合格」制度を導入した。来年からは試験範囲を絞ったり試験日を週末にするなど社会人も受けやすくする。来年以降も合格者数は二千人を超す見通しだ。
 企業側は会計士人口拡大を基本的に歓迎している。会計士をほとんど採用していなかった三菱商事は「専門知識を持った人材を増やしたい」(水野一郎副社長)と、この二年間で九人を中途採用した。バンダイナムコホールディングスも九月に大手監査法人の元幹部を顧問に迎えた。
 ただ、どの企業も高い知識や経験を持つ会計士の採用が前提で、合格者を一人前に育てたり監査技術を教えたりするのは難しい。「監査法人が現場で鍛えるしかない」(大手法人幹部)といい、会計士業界が合格者の受け皿にならざるを得ない。
 一方、大手監査法人は「監査の品質を維持しながら無理のない範囲で業容を拡大したい」(あずさ監査法人の佐藤正典理事長)と、品質維持と成長のバランスを強調する。大手法人は今後数年でベテランの団塊世代が大量に退職し、優秀な人材が不足するのは必至。大手だけで大量の合格者を引き受け続けるのは無理との声も漏れる。
 合格後の研修制度でもひずみが出ている。合格者が会計士として登録するには研修と二年間の業務補助が必要。研修を受け持つ会計士協会では急きょベテラン教員や授業場所の確保に奔走した。「一クラス二百五十人のマスプロ授業で指導が行き届くかどうか心配」(幹部)という。
 会計士協会の増田宏一会長は「大学や経済界とも連携した人材養成の仕組みを考える時期に来ている」と話す。会計士の活躍の場が監査以外にも広がるなか、監査の品質を維持しつつ多様な人材を育てる仕組みづくりが問われている。

2007年12月20日