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新車販売25年ぶり低調(日経新聞2008/01/08)

その他

新車販売25年ぶり低調
軽不振、カー用品縮む
 自動車業界団体が七日まとめた二〇〇七年の国内新車総販売台数(軽自動車含む)は前年比六・七%減の五百三十五万三千六百四十五台と三年連続で減少し、二十五年ぶりの低水準となった。人口減や若者のクルマ離れ、さらにガソリン高も重なり販売減に歯止めがかからない。カー用品や自動車雑誌など関連市場も縮小している。自動車メーカーは国内販売テコ入れに躍起だが効果は薄く、低迷から抜け出すにはなお時間がかかりそうだ。
高級車は健闘
 日本自動車販売協会連合会によると、登録車(排気量六六〇cc超)は七・六%減の三百四十三万三千八百二十九台で、三十五年ぶりの低水準。トヨタ自動車の「レクサス」など一部の高級車やミニバンを除き、販売台数の多いコンパクトカーなど総じて需要は低迷した。
 〇六年に過去最高を記録した軽自動車(六六〇cc以下)も新型車不足などで失速。全国軽自動車協会連合会によると、〇七年は五・一%減の百九十一万九千八百十六台と四年ぶりに減少した。
 国内市場はピークの一九九〇年より三割縮小した。〇七年の世界の新車販売は、首位の米国が前年比横ばいの千六百十五万台。〇六年(七百十五万台)に日本を抜き二位に浮上した中国は八百万台超に増えたもよう。
 企業別では、ダイハツ工業を除き減少した。ダイハツは暦年で初めてスズキから軽首位の座を奪い、総販売も五位から四位に上昇。スズキは総販売では四位から三位に上がり、軽の不振が深刻なホンダは三位から五位に転落した。
雑誌部数が半減
 今後も好材料は少なく、日本自動車工業会は〇八年の新車販売が約五百三十二万台と四年連続で減るとみる。中でも悩みのタネは若者のクルマ離れ。自工会の調べでは一九九三―〇五年にかけ、全体の自動車保有率は七七・七%から八一・七%に上昇したが、二十九歳以下の男性は低下。二十代前半の男性では非保有率が二四・九%から三二・一%に上昇した。
 市場縮小の影響は関連業界にも及ぶ。自動車用品小売業協会によると、オートバックスセブンなど加盟約十社の〇六年度のカー用品小売り売上高は前年度比三・二%減の約四千七百億円。〇七年度も減少傾向が続く。
 出版科学研究所(東京・新宿)によると、〇六年の自動車雑誌の発行部数は八千百三十一万部とピークの九五年に比べて半減した。少子化の影響に加え、新車販売の主力がコンパクトカーに移り、かつて車好きの若者が好んだような“走り”の性能比較といった記事では読者がつきにくくなっているという。
 自動車各社は成長戦略の軸足を海外に移しつつあるが、国内でも販売店強化など手を打っている。それでも新車販売低迷には様々な要因が絡み、効果はまだ限定的だ。

昨年6.7%減、535万台
クルマ社会曲がり角
興味分散、若者離れる
 国内自動車市場の縮小が続いている。理由は二つ。一つは社会構造や消費者心理の変化。もう一つは変化に対応しないメーカーの怠慢だ。
 自動車雑誌「ベストカー」編集部では五年ほど前からアルバイト希望者がめっきり減った。「昔はクルマ好きの若者が押しかけたのだが」と飯干俊作副編集長。読者の主力はいまや四十代。販売低迷で倒産した大手自動車雑誌社もある。
 日経産業地域研究所の二〇〇七年の調査では首都圏に住む二十代のうち、クルマに興味があるのは五三・五%。五年間で二〇・六ポイントの大幅減だ。日本自動車工業会の調べでも、二十九歳以下の男性でクルマの非保有率が〇一年ごろから急上昇している。
 若い男性にとってクルマはスリル、機械いじり、デートなどさまざまな目的を同時に満たす「投資効率」のいい消費財だった。いま娯楽はゲームなど多様化し、機械への興味は薄れ、モテる条件はファッションや携帯メールへのこまめな返信に変わったとされる。
 賃金の伸び悩みなどで懐具合も厳しい。地下鉄など都市部の公共交通も充実した。駐車場代など維持コストを考えればクルマ離れは当然の流れ。子供の誕生もクルマ購入の契機になってきた。少子化は若者減と「子のいる世帯数」減の両面で市場に打撃を与えた。
 若者の動向は社会の先行きを示す。米国の都市経済学者、リチャード・フロリダ氏は今後、金融の専門家やデザイナーなど知的生産性の高い層を引き付けるのは、公共交通や自転車専用道路が充実し、渋滞などクルマ社会につきまとうストレスが少ない都市だとみる。グローバルな都市間競争で、クルマはすでに主役ではない。環境問題もあり、米国を含む先進国で一斉に「ポスト自動車社会」への胎動が始まっているのかもしれない。
 自動車会社にも販売不振の原因はある。消費者不在の性能競争に走ったり、合理化の副作用で没個性的なデザインのクルマを生み出したりしてきた面はないか。服飾や生活雑貨の企業にならい、社内外の若者や女性の声を大切にすべきだろう。
 いま自動車各社は「GT―R」など「昔、クルマにあこがれた中高年男性」向けの復活ブランド商品で一息ついている。二十年後にどうするのか。小手先の新製品ではなく、新しい生活価値を提案できるかどうかが市場の今後を左右する。

2008年01月08日