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米、0.75%緊急利下げ(日経新聞2008/01/23)

その他

米、0.75%緊急利下げ
景気悪化回避狙う
FF金利3.5%に
市場混乱を懸念
 【ワシントン=小竹洋之】米連邦準備理事会(FRB)は二十二日、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を緊急に〇・七五%引き下げ、年三・五%とすることを決めたと発表した。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端とする米景気の後退や世界同時株安に歯止めをかけるため、異例の大幅利下げに踏み切った。ブッシュ大統領が表明した景気対策と協調し、財政・金融政策を総動員して米経済の危機回避を目指す。市場では根本的な問題解決になりにくいとの見方から、同日の米株式が一時四六〇ドル下落するなど不安定な動きをしている。(FF金利は3面「きょうのことば」参照)

 緊急利下げ後に発表した声明は「景気下振れリスクがかなり残る。必要に応じ迅速に行動する」と指摘。二十九、三十日に開く定例の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも一段の金融緩和に踏み切る可能性を示唆した。
 FRBは二十一日夕、臨時のFOMCを開き、〇・七五%の緊急利下げを賛成多数で決定。二十二日朝に正式発表し、即日実施した。FF金利引き下げは、四年三カ月ぶりの金融緩和に転じた昨年九月から連続四回目。
 FF金利変更が金融政策運営の主流になった一九九〇年代以降、一回で〇・七五%の大幅利下げを決断したのは初めて。臨時FOMCによるFF金利の緊急利下げは、米同時テロ発生直後の二〇〇一年九月以来となる。
 金融機関向けの貸出金利である公定歩合も〇・七五%引き下げ、年四%とした。九一年十二月の一%以来の大幅な利下げ。昨年八月の緊急利下げから連続五回目の引き下げとなった。
 二十二日の声明は世界的な株安などを受けて「金融市場の状態は幅広く悪化してきた」と指摘。「景気下振れのリスクが高まった」と判断し、月末の定例FOMCを待たずに大幅な追加利下げを実施したと説明した。
 米国では市場の混乱や信用の収縮が予想以上に長引き、〇一年以来の景気後退局面に突入するとの懸念が広がる。米景気への不安を背景に各国市場で株安が加速し、米国発のサブプライム問題が世界経済全体の危機に発展する恐れも出てきた。
 FRBのバーナンキ議長は原油高などによる物価上昇圧力の高まりも警戒し、一%ではなく〇・七五%の利下げを決断したもようだ。FRBは大量の資金供給も続行し、危機回避に全力を挙げる構えだが、流動性の維持と金融緩和では問題を解決できないとの見方も出ている。
<FOMCの決定骨子>
○FF金利の誘導目標を〇・七五%引き下げて年三・五%にすることを決め、即日実施した
○米経済の見通しが悪化し、景気下振れリスクが高まった
○短期金融市場の緊張は緩和したが、金融市場の状態は幅広く悪化
○住宅市場は一段と低迷し、労働市場は減速している
○景気下振れのリスクは残っている

欧米株、動き不安定
NYダウ、460ドル下落後に戻す
【ニューヨーク=山下茂行】二十二日午前のニューヨーク株式市場でダウ工業株三十種平均は続落。アジア株急落を受けて取引開始直後に前週末比で一時四六〇ドル超まで下げ、一万二〇〇〇ドルの大台を大きく割り込んだ。売り一巡後は緊急利下げを好感した買いも入り、午前十一時十分(日本時間二十三日午前一時十分)現在、六一ドル二九セント安の一万二〇三八ドル〇一セントで推移している。
 取引開始直後の急落は、ヘッジファンドなどがアジア株の損失を埋めるために米株を売る動きなどが出たため。同日決算を発表した米銀大手バンク・オブ・アメリカが減益となったことも売り材料。その後は利下げによる景気下支え期待も出て買い戻されている。ナスダック総合株価指数は同時刻現在、二三・九五ポイント安の二三一六・〇七。

22日の欧州株式相場は乱高下
【ロンドン=田村篤士】二十二日の欧州株式相場は乱高下。英国やドイツの株価指数は朝方は大幅続落して始まったが、FRBによる緊急利下げなどを背景に上昇に転じている。午後三時五十分(日本時間二十三日午前零時五十分)現在、英FTSE百種総合株価指数は前日比一一五・七ポイント高の五六九三・九、同時刻のドイツ株式指数(DAX)は一二・八一ポイント高の六八〇三・〇〇。

日経平均終値752円安
アジア株大幅下げ
 二十二日の東京株式市場では日経平均株価が七〇〇円を超える今年最大の下げとなり、一万三〇〇〇円台を割り込んだ。これを受けて中国やインドをはじめとするアジア株が急落し、ロシア株なども大幅に下落した。サブプライム問題が好調な新興国に波及して世界景気が減速するとの懸念が広がっており、株安が連鎖する構図となった。
 東京市場では現物株や株価指数先物に売り注文が殺到。外国人の見切り売りや個人のろうばい売りが止まらず、日経平均は前日比七五二円八九銭(五・六五%)安の一万二五七三円〇五銭で取引を終えた。約二年四カ月ぶりの安値水準。東証一部の株式時価総額は三百九十九兆円と四百兆円を割り込み、昨年七月の高値から百八十二兆円が吹き飛んだ計算だ。
 中国は大手銀行がサブプライム関連で巨額損失を出すとの観測から上海総合指数が七・二%安。上海市場の約七割の銘柄が制限値幅いっぱいのストップ安となった。インドも株価指数の下落率が一時一一%を超え、取引を中断する場面もあった。
 連鎖的な株安が新興国にも波及してきたのは、米国が減速しても新興国は成長を続けるという「デカップリング(非連動)論」が揺らいでいるため。サブプライム問題が「世界的な信用収縮を引き起こしかねない新たな段階に入ってきた」(第一生命経済研究所)との警戒感も広がっている。

経済情勢「微妙な局面」
日銀総裁、慎重に見極め
 日銀の福井俊彦総裁は二十二日、政策金利据え置きを決めた金融政策決定会合後の記者会見で、経済・金融情勢について「先行きを判断する上で微妙な局面に差し掛かっている」との認識を表明した。世界的株安について「日本経済に対し逆資産効果や企業、消費者心理を通じてネガティブな影響を及ぼすリスクがある」と指摘。世界の経済・金融情勢を慎重に見極める姿勢を示した。(関連記事4、5面に)
 福井総裁は会見で、国内経済について「足元減速している」と指摘したが「先行き息の長い成長を続ける蓋然(がいぜん)性が引き続き高い」と説明。金利正常化をめざしてきた金融政策運営についても「基本スタンスに変わりはない」と言明した。ただ金融市場の混乱には「世界経済の不確実性を市場が強く意識している」と懸念を示した。

FF金利(きょうのことば)
▽…フェデラルファンド金利(federal funds rate)。米国の中央銀行に当たるFRBが短期金融市場を操作する際の対象となる政策金利。日本の無担保コール翌日物金利に相当する。民間銀行は預金残高に応じて中央銀行に準備預金を預けるが、そのために必要な資金や余った資金を銀行間で融通し合う際に適用する。
▽…市場操作はニューヨーク連銀が担当し、国債の売買などを通じてFF金利をFOMCの決めた水準に誘導する。誘導目標は通常、年8回開くFOMCで決めるが、臨時会合が開かれる場合もある。FRBは2007年9月、4年3カ月ぶりにFF金利を引き下げ、金融緩和に転じた。このほか、FRBが決める金利には、金融機関向け貸し出しに適用する公定歩合がある。

2008年01月23日