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日経平均1171円高、終値9447円、上昇率最大14%超(日経新聞2008/10/15)

日経平均1171円高、終値9447円、上昇率最大14%超
 十四日の東京市場では日経平均株価が一一七一円高と八日ぶりに急反発し、過去最大の一四%を超える上昇率を記録した。前週末の七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議を受け、欧米が金融機関への公的資金注入など金融危機対策に動き出したことが好感された。欧米株も続伸して始まり、世界的な株安連鎖にはひとまず歯止めがかかった。ドルも買われて円相場は一時、一ドル=一〇三円台に下落したが、金融危機が収束に向かうかどうかは不透明。市場は不安定な動きを続けそうだ。(関連記事3面に)
 日経平均の終値は前週末比一一七一円一四銭(一四・一五%)高の九四四七円五七銭。上昇率は一九九〇年十月二日の一三・二四%を上回り、過去最大になった。九〇年十月二日はバブル経済の崩壊初期で、旧大蔵省が株価てこ入れ策を発表した翌日。十四日は主力銘柄に買いが殺到。東京証券取引所第一部銘柄の九八%が値上がりする全面高になった。

負の連鎖ひとまず歯止め、東京市場、金融対策を好感(景気がわかる)
日経平均上昇率最大
円、一時103円台に下落
実効性見極め
 十三日の欧米市場の急騰に続いて十四日の東京市場で日経平均株価が過去最大の上昇率を記録。外国為替市場ではドルが一時、一ドル=一〇三円台まで買い戻された。前週末の七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議を境に過度な不安心理が後退し、ドル安と株安の負の連鎖にひとまず歯止めがかかった。ただ金融危機対策の実効性は不透明。世界景気の先行きに悲観的な見方も多く、大幅高で始まった十四日の米国株が伸び悩むなど先行きは予断を許さない。(1面参照)
 午前八時。ネット証券大手、カブドットコム証券のコールセンターには個人投資家からの電話が殺到。電話がつながりにくくなり、急きょ三十人から四十人規模に増員した。「口座を開設したい」「使っていなかった口座を復活させたいので手続きを教えてほしい」――。内容は新規の取引についてのものが大半。株価急落で信用取引の追加担保差し入れ義務(追い証)についての質問が相次いだ先週までとは一変した。
 同じころ。国内証券系投資顧問会社のファンドマネジャーは、電機など複数の輸出関連株に買い注文を出した。輸出関連には市場平均以上に値動きが大きいとされる銘柄が多い。前日のニューヨーク市場の急騰をみて「相場の潮目が変わった」と直感したという。
 市場心理の好転は記録にくっきり表れた。東京証券取引所第一部の値上がり銘柄数(千六百七十八)は過去最多。日経平均採用二百二十五銘柄のうち、四割強にあたる百一銘柄が制限値幅の上限まで上昇(ストップ高)した。東京エレクトロン株や京セラ株は買い殺到で取引終了まで値が付かなかった。
 ただ金融危機への警戒が解けたわけではない。買いの中心は売り方の買い戻しとみられ、一部の個人投資家を除いては大部分が様子見姿勢を決め込んだ。東証一部の売買代金は二兆円を割り込む九月二十九日以来の低水準。「危機の根源である米住宅価格の下落が止まらないと根本的な解決にはならない」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト)との声は多い。
 一方、為替市場ではリスク回避目的で円が買われていた流れが反転。対ドルで一時、一ドル=一〇三円台まで下落し、対ユーロでも前週末の高値から九円近く安い一ユーロ=一四一円台を付けた。ただ危機対策が実際に動き始めるまでにはまだ時間があるだけに、「米欧の金融機関の決算が予想以上に悪化していれば、再び円高が進み相場が不安定になる可能性もある」(ステート・ストリート銀行の富田公彦金融市場部長)との見方もある。

負の連鎖ひとまず歯止め――日本株なぜ米より値動き大きい(景気がわかる)
グローバル企業
世界景気が収益左右
 日本株の変動率は金融危機の震源である米国以上に大きかった。米大手証券リーマン・ブラザーズが破綻してから先週末までの日経平均の下落率は三二%。同期間のダウ工業株三十種平均(二六%強)を上回る。
 日本株の売買の約六割を占めるのは外国人。リーマンの破綻で金融危機が世界経済に本格的に波及するとの懸念が強まり、ヘッジファンドの売りに拍車がかかった。日本株の中心はトヨタ自動車など世界景気の動向に収益が大きく左右されるグローバル企業。こうした銘柄が集中的に売り浴びせられたことで、下落率が大きくなった。
 八月以降、外為市場で円高・ユーロ安が加速。欧州の投資家にとってユーロ建てで見た日本株はあまり値下がりせず、その分、売却対象となった面もある。金融危機のさなかの自民党総裁選実施など政治空白を生んだのが外国人に嫌われたとの声もある。
 十四日の日本株の上昇率が前日の米国株(一一・一%)を上回ったのはその反動。「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)などで説明できない水準までパニック的に売られただけに、反動による上昇は他国市場より大きくなる」(ユナイテッド投信投資顧問の高塚孝一シニアファンドマネジャー)という。

特集――市場と政策、緊迫の1年、サブプライム危機、資本注入で協調、ヤマ場に
 仏銀最大手のBNPパリバが傘下ファンドを突然凍結した二〇〇七年八月の「パリバ・ショック」で始まった世界的な金融市場の動揺に歯止めはかかったのか。金融機関への資本注入や銀行間取引の保証にまで踏み込んだ今回の国際政策協調はパリバ・ショックから数えて六番目のヤマ場となる。株式市場はひとまず落ち着いたようにみえるが、正念場は続く。(1面参照)
仏パリバ 第一波
 市場を不意打ちしたパリバ・ショックはサブプライム問題を一気に表面化させた。カネ余りを背景とした欧米での信用膨張が瓦解を始めた瞬間ともいえた。銀行間の取引に疑心暗鬼が広がり、中央銀行による多額の流動性供給など当局も緊急対応の姿勢を強めた。
 次に来たヤマ場は〇八年三月、米証券大手ベアー・スターンズが資金繰りに行き詰まり実質的な破綻状態になったことだ。円相場は一時一ドル=九五円台に上昇、日経平均株価は一万二〇〇〇円を割った。三つ目のヤマ場となったのは七月。今度は米国の連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)など、住宅公社二社の経営悪化問題が浮上した。
 米金融不安は現実の金融危機に発展――。九月十五日に米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻したのが第四のヤマ場である。米証券大手メリルリンチは米大手銀行バンク・オブ・アメリカへの身売りを決めた。リーマンは救済されるとの事前観測が大勢だっただけに市場では大きなサプライズと受け止められた。これを機に欧米の金融機関同士の疑心暗鬼は一段と強まり、各国中央銀行が大規模なドル資金供給を続けたものの、銀行間金利は上昇を続けた。
 米大手投資銀行の経営不安が急速に高まるなかで、当局は公的資金を使った不良資産の買い取りに動き出す。これが五つ目のヤマ場だ。この局面では米金融安定化法案が下院でいったん、予想外の否決となるなど、政治の迷走も市場の一段の混乱につながった。大手フォルティスの部分国有化など欧州金融機関の経営が一段と不安視されだしたのもこの時期だ。
 安定化法が成立してもなお政策が不十分と、市場は金融機関への資本注入を求める催促相場の様相を強め始める。サブプライム危機は六つ目のヤマ場に差し掛かった。
 「日米株価のダブル一万割れ」。十月六日に米ダウ工業株三十種平均が終値で一万ドルの大台を割り込んだ流れを引き継ぎ、七日は東京市場でも日経平均が取引時間中に一万円を下回った。八日の日経平均は終値で一万円を割り、世界株安に一気に拍車がかかった。
 日経平均の終値での一万円割れは〇三年十二月以来。金融不安の解消などで〇七年七月には一万八二六一円まで上昇した。一万円割れで、およそ三年半かかった日経平均の上昇分は一年ちょっとで帳消しになった。

特集――市場と政策、緊迫の1年、サブプライム危機、各国の対策始動
 危機を封じ込めようとする各国政府の対応は後手に回っていた。米金融危機の悪影響は実体経済にも波及。米国では業績悪化の懸念が強まったことから米ゼネラル・モーターズ(GM)の株価が九日に五十八年ぶりの安値に売り込まれた。
 九日には日本で、上場REIT(不動産投資信託)が初めて破綻した。続いて十日には株安のあおりなどで中堅生保の大和生命保険が破綻した。国内金融機関の経営をも揺さぶる結果に、日本の傷は浅いとみていた国内の投資家も驚いた。
 週末十日の市場は異例ずくめの展開に。日経平均の下げ幅が一時一〇〇〇円を超えた。下落率も一時一〇%超。一九八七年十月のブラックマンデー(世界的な株価暴落)に次ぐ水準だった。
 安全資産とされる国債も売られ、金融資産から資金を引き揚げる動きが鮮明になった。中東産ドバイ原油が一年ぶりの安値となり、円相場が一ドル=九七円台まで急騰した。インドネシア、ロシア、ルーマニア……。十日は株価急落により新興国市場で株式取引を停止する動きも相次いだ。
 世界経済が深刻な危機に陥る瀬戸際とみた主要国の政府は、先週末の日米欧七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、市場が催促していた金融機関への資本注入などを含む、異例の「行動計画」を打ち出した。
 有事モードの政策は銀行間取引の保証にも踏み込んだ。英国は金融機関への具体的な大型資本注入を発表した。これらを受け、十三日のアジアや欧州の株式相場は急反発した。仏独や米国も金融機関への資本注入の具体策に動き、続く米国のダウ平均は前週末比九三六ドル高と、史上最大の上げ幅を記録した。
 祝日開けの十四日の日経平均は一一七一円高。一四・一五%の上げとなり、上昇率はこちらも過去最大を記録した。
 ただ、実体経済は減速の度合いを強めており、株価の先行きに不安は残る。危機の深まりをどこで食い止められるか。マーケットと、各国政府の“戦い”は続く。

日経平均――225銘柄すべて値上がり(マーケットスクランブル)
 ◇日経平均株価は八日ぶりに大幅反発。米国株が急騰した流れを引き継いだ。終値で日経平均採用の二百二十五銘柄がすべて値上がりし、八十二銘柄が制限値幅の上限まで上昇(ストップ高)した。ただ東証一部の売買高は二十三億八千三百万株で、記録的な値上がりの割には盛り上がりに欠けた。

時価総額上位20社、ストップ高が6割、主力株に買い戻し
 十四日の株式市場は日経平均株価が急反発し、時価総額の上位二十社のうち、六割に当たる十二社が制限値幅の上限(ストップ高水準)まで買われた。足元の下げがきつかった反動で、トヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループなど主力株に買い戻しが入った。ただ、世界経済の減速懸念が強まっており、大型株が一本調子に上昇するとの見方は少ないようだ。
 「財務の安定性や収益力で買い安心感があるうえ、自社株買いも期待できる」。三井インベストメントパートナーの三井郁男社長は、投資資金がいったん国際優良株に戻る可能性が高いとみる。金融危機にひとまず歯止めが掛かり、みずほフィナンシャルグループはストップ高水準で買い注文を残した。
 トヨタ、ホンダなど自動車や新日鉄など鉄鋼株も売られ過ぎとの見方から、買い戻された。商社も三菱商事や三井物産が軒並みストップ高水準で引けた。「個人の一部が指標面などの割安感から下値を拾い始めている」(中堅証券)という。
 ただ、市場では「優良企業の株はいったん買い戻されても、上値の重い展開が続くだろう」(東洋証券の児玉克彦シニア・ストラテジスト)との見方も根強い。金融危機が一服しても、世界景気の悪化が意識される局面が続くためだ。AIGインベストメンツの元木宏常務執行役員は「企業の業績下方修正が増えそうで、輸出関連株などは買いにくい」と語る。
 リーマン・ブラザーズが経営破綻する直前(九月十二日)から十四日までの業種別騰落率は、海運や鉄鋼、自動車などの下落率が約三割に達している。割安感を指摘する見方もあるが、「今後の決算内容を見極める動きが強まる」(国内系投資信託)との声が多い。

時価総額上位20社の前週末比と昨年末比の騰落率
(%、▲下落)
      前週末比騰落率      昨年末からの騰落率
トヨタ※      15.5      ▲38
三菱UFJ※      14.1      ▲23
NTTドコモ      10.7      ▲19
NTT      4.9      ▲28
任天堂※      10.9      ▲39
三井住友      16.8      ▲23
キヤノン※      16.1      ▲31
ホンダ      17.8      ▲34
みずほ※      15.2      ▲29
パナソニック      13.0      ▲30
武  田※      12.0      ▲29
三菱商※      17.4      ▲34
東  電      11.2      ▲14
J  T※      14.2      ▲51
東京海上※      16.1      ▲5
野村HD※      16.3      ▲25
ソニー※      16.8      ▲55
JR東日本      15.5      ▲25
菱地所※      18.3      ▲28
新日鉄      24.1      ▲47
(注)※は14日にストップ高で引けた銘柄         

2008年10月15日