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日経平均1089円安(日経新聞2008/10/17)

その他

日経平均1089円安
11%強、過去2位の下落率
 世界の市場が再び動揺している。十六日の東京市場で日経平均株価が一〇八九円安と一一%強の急反落となり、過去二番目の下落率を記録した。外国為替市場ではドルが売られ、円相場は一時、一ドル=九九円台前半まで上昇した。欧米の金融危機で世界景気が悪化するとの懸念が一段と強まった。アジア株の急落に続いて欧米株も大幅安で始まっており、主要国の金融安定化策でいったんは落ち着きを取り戻した世界の市場は、再び不安定な展開となってきた。(関連記事3、7面に)
 日経平均の終値は前日比一〇八九円〇二銭(一一・四一%)安の八四五八円四五銭。十日につけた今年の最安値(八二七六円)まで一八〇円あまりに迫った。
 下落率は一九八七年十月のブラックマンデー(一四・九〇%)に次ぐ大きさで、終値ベースの下げ幅が一〇〇〇円を超えたのはIT(情報技術)バブル当時の二〇〇〇年四月以来。
 東京証券取引所第一部では全体の九割以上の銘柄が値下がりし、売買代金も二兆一千七百億円(概算)と低調だった。

世界同時不況の様相
米鉱工業生産、9月2.8%低下、34年ぶり下げ幅
 世界同時不況の様相が強まってきた。金融危機は、実体経済の急速な悪化へと局面を移した。経済変調は主要国から新興国へ波及し、一部で景気後退(リセッション)懸念がくすぶる。市場は金融安定化策が出そろったのを見て、弱い材料が続出する景気に不安な視線を向け始めた。
■米 国
 米連邦準備理事会(FRB)が十六日発表した九月の鉱工業生産指数は前月比二・八%低下し、一九七四年十二月以来ほぼ三十四年ぶりの大きな落ち込みとなった。十五日のニューヨーク株式市場で史上二番目の下げの主因となったのは小売売上高の不振。生産、消費と連日、米景気の悪化が明らかになる。サンフランシスコ連銀のイエレン総裁は「米経済はリセッション入りしたようだ」と公言した。
■欧 州
 ドイツ政府は十六日、二〇〇九年の経済成長率見通しを四月時点の一・二%から〇・二%に大幅下方修正した。
 すでにアイルランドは今年前半に二・四半期連続のマイナス成長を記録し、ユーロ圏で初めて「景気後退」に突入。信用収縮の影響で右肩上がりだった住宅価格が下落に転じ、不動産部門や個人消費が落ち込んだ。
 欧州では「七―九月のユーロ圏の実質成長率も前期比マイナスに低迷する」(モルガン・スタンレーのエコノミスト、エルガ・バーチ氏)など下振れリスクを指摘する声が増えている。
■新興国
 実体経済悪化の波は高成長してきた新興国に達しつつある。
 中国・上海の浦東地区にそびえ立つ森ビルの百一階建てのオフィスビル「上海環球金融中心」。テナント契約率は一年後には九〇%まで引き上げる計画だが、現状は四五%にとどまる。金融危機のあおりで欧米系投資銀行はリストラの真っ最中で「環球中心の出資者でもある米モルガン・スタンレーと入居交渉しているのは事実だが、契約はまとまっていない」(森ビル)。中国の個人消費などはなお底堅いが、「不動産バブル」は調整局面を迎えた。
 インドでは四―九月の新車販売が前年同期比七・五%増と、昨年の一二・二%増を大きく下回った。ロシアやブラジルでも景気減速を示す材料が相次ぐ。

危機波及、景気を懸念
世界同時株安再び
「見切り売り」拡大
ヘッジファンド、下げ加速
 十六日の東京株式市場で日経平均株価が一〇〇〇円を超す下落となり、再び九〇〇〇円を大きく割り込んだ。金融危機の実体経済への本格的な波及が懸念され、幅広い銘柄が売られる全面安の展開。主要国が先週末から相次いで打ち出した金融安定化策が好感され、前日までの二日間で一三〇〇円近く上昇したが、そのほとんどが一日で消えた。なかなか底値がみえてこない状況に、市場の先行き不安は高まっている。(1面参照)
個人投資家 投信解約に動く
 ある米系証券には三井住友フィナンシャルグループなどの大手銀行株の売り注文が外国人から次から次へと舞い込んだ。前日に中央三井トラスト・ホールディングスが二〇〇八年九月中間期の業績予想を下方修正したばかり。市場では銀行の業績悪化懸念が強まっていた。「見切り売りだ」。注文を受けたトレーダーは思わず漏らした。
 前日の米国株の急落を受けてこの日も朝から売り一色。スイス政府が金融大手のUBSに巨額の資本注入を決めたと発表すると、相場の下げが加速した。本来なら危機回避策として好感されてもおかしくないが、「『そこまで悪いのか』とネガティブに受け止められた」(JPモルガン証券の宗岡功二セールストレーディング部部長)。
主力株下げ圧力
 相場の下げを加速させたとみられるのがヘッジファンドの売り。顧客からの解約に備えた換金売りは週初に一巡したもようだが、「主力株にヘッジファンドから新規の空売り注文が増えてきた」(外資系証券)という。TDKやファナックといった主力株の一角は値幅制限の下限(ストップ安)まで下落しても値段がつかなかった。
 個人投資家からは投資信託の解約が急増した。東京・大手町の銀行窓口には株式投信を解約する顧客の姿も。「投信を解約して定期預金に預ける顧客が急に増えた」と担当者。ある生保系の投資信託でも十六日は日本株投信の解約が目立った。「午後からの下げの一因は投信の解約売り」との声は多い。
「真空地帯」突く
 一日で一〇〇〇円前後も上下する荒っぽい値動きを続けているのは、積極的な取引が引っ込む中で投機目的や換金目的などのまとまった売買注文が次々と出てくるためだ。株価は真空地帯の中をスルスルと上下するような状態になっている。
 信用取引で株式を買った個人などの含み損益を示す信用評価損益率は十日申し込み時点でマイナス三八%。バブル経済崩壊後で最悪の水準に悪化した。横浜市の五十代の主婦は「ジェットコースターのような値動きで資産の目減りが心配」とファイナンシャルプランナーのもとへ相談に駆け込んだ。投資マネーの株式離れは一段と加速しつつある。
日経平均株価の下落率ランキング            
下落率(%)      立会日   終値(円)   
(1)14.9 1987年10月20日  21,910  ブラックマンデー
(2)11.4 2008年10月16日   8,458   
(3)10.0 1953年3月5日   340   スターリン暴落
(4)9.6 2008年10月10日   8,276   
(5)9.4 2008年10月8日   9,203   
(6)8.7 1970年4月30日  2,114  国際投資信託(IOS)の破綻
(7)7.7 1971年8月16日   2,530   ニクソンショック
(8)7.0 2000年4月17日   19,009   ITバブル崩壊

投機主導のマネー経済崩壊
株安・原油安が同時進行
 日米の株価が下落する一方で、原油先物価格も急落している。十六日のニューヨーク市場では一年二カ月ぶりに一バレル七〇ドルを割り込んだ。今年七月につけた史上最高値(一四七・二七ドル)からわずか三カ月で半値以下になった。株安・原油安の同時進行は、投機資金主導のマネー経済の崩壊を象徴している。
 これで原油価格は米サブプライム危機が表面化した昨年八月の水準に戻った。昨年夏以降、サブプライムに揺れる米国経済への不安から、ドルや株が売られ、流出した投機資金が原油など国際商品に向かう動きが広がった。その結果、原油価格は一年足らずで二倍と、需給要因だけで説明できない水準まで跳ね上がった。投機マネーのいたずらは、原油高に伴う様々な物価・コストの上昇という形で、世界経済の下押し要因になった。
 傷は米国の金融機関の心臓部にまで達し、米大手証券破綻、公的資金による大手米銀への資本注入にまで発展した。原油高騰を演出してきた投資マネー自体がリスクを恐れ、収縮する過程に入り、国際商品市場からも資金流出が始まった。一年二カ月で原油価格は元の水準に戻ったが、ニューヨーク・ダウは三五%、日経平均は五割弱も下がり、世界経済の風景も変わった。

2008年10月17日