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日経平均、7649円に急落(日経新聞2008/10/25)

相場観

欧州市場、円急騰、一時90円台
日経平均、7649円に急落
 世界の金融・資本市場の動揺がおさまらない。二十四日の外国為替市場では円相場が急騰し、東京市場に続いて開いた欧州市場では一時一ドル=九〇円台と約十三年三カ月ぶりの円高・ドル安水準となった。円高による企業業績の悪化懸念から日経平均株価は八〇〇〇円を割り込み、二〇〇三年四月につけたバブル崩壊後の安値に迫った。同日の米欧アジアの株価も軒並み下落、世界同時株安が続いている。政府は株安に歯止めをかけるため緊急の証券・金融市場安定化策の検討に入った。(関連記事2、3、4、5、9、11面に)
 【ロンドン=御調昌邦】二十四日のロンドン外国為替市場では円相場が急騰、午前十時(日本時間午後六時)過ぎに、一時一ドル=九〇円八七銭をつけ、一九九五年八月以来約十三年三カ月ぶりの円高・ドル安水準となった。世界的な株価急落を受け、日本の投資家などが外貨資産の換金売りを急いだ。対ユーロでも一ユーロ=一一三円台後半まで上昇し、約六年ぶりの高値を付けるなど、円は全面高となった。
 ロンドン市場では欧州株が大幅下落して始まったことを受け、円買い・ドル売りが加速、九〇円台をつけた。
 円はポンドや豪ドルなどの通貨に対しても大幅に上昇している。主要通貨の中ではユーロが最も弱く、ドルは対ユーロで上昇基調にある。
 世界的な景気悪化や金融システム不安を受け、海外投資家などが低金利の円を借りて高金利の外貨資産に投資する「円キャリー取引」を解消する動きを加速させた。
 欧米に比べ日本は金融危機の傷が浅いとの見方も、円買いにつながっている。
 二十四日の東京株式市場では日経平均株価が三日続落し、前日比八一一円九〇銭(九・六〇%)安の七六四九円〇八銭で取引を終え、二〇〇三年四月二十八日につけたバブル崩壊後の安値(七六〇七円八八銭)まであと四一円余りに迫った。世界的な景気減速への警戒感が強まるなかで、対ドルとユーロで円高が急速に進み、輸出関連株を中心に幅広い銘柄に売り注文が広がった。
 二十四日の日経平均の下落率は過去五番目。昨年末から二十四日までの下落率は五〇・〇三%で、約五年六カ月ぶりの安値になった。東京証券取引所第一部の時価総額は昨年一年間で最も大きかった二月二十六日と比べると、二十四日までに三百二十兆円強減った。

NY株一時500ドル下げ
 【ニューヨーク=川上穣】二十四日午前のニューヨーク株式市場でダウ工業株三十種平均が急落。前日終値に対する下げ幅は一時、五〇〇ドルを上回った。世界的な景気悪化や金融不安への警戒感から、幅広い銘柄に売りが膨らんだ。原油相場の急落を受けてエネルギー関連株が売られているほか、金融株も安い。正午(日本時間二十五日午前一時)現在、前日比二六七ドル四六セント安の八四二三ドル七九セントで取引されている。

銀行保有株、買い取り再開
政府が緊急対策検討
日銀にも要請へ
公的資金枠も拡充
 政府は二十四日、世界的な株価急落を踏まえ、緊急市場安定化策の検討に入った。株価安定と金融機関の経営の健全性を後押しするため、銀行が保有する株式について、銀行等保有株式取得機構による買い取りを再開する。日銀にも株式の買い取りを要請する。金融機能強化法改正案に盛り込んだ公的資金による資本注入枠二兆円も拡充する。政策総動員の姿勢を打ち出し、株式市場や金融機関の不安感を払拭(ふっしょく)することを目指す。ただ円高・株安の流れに歯止めをかけるためには、国際的な政策協調も必要になりそうだ。(日銀の銀行保有株買い取りは3面「きょうのことば」参照)=関連記事3面に
 政府は今月十四日、自社株買い規制の緩和や、取得機構などが保有する株式の市場売却の一時凍結といった当面の市場安定策を公表した。だが市場の混乱は収まらず、動揺を防ぐには追加の対策が急務と判断したもようだ。週明けにも公表する方向で検討を急ぐ。
 政府が検討中の原案によると、安定化策は「株式買い取り」「金融機関への資本注入」「会計」「株式取引規制」「その他」の五つの柱で構成する。
 即効性のある対策としての株式買い取りについては、必要な法改正をしたうえで、取得機構による銀行保有株の買い取りを再開する。取得機構は金融危機時の〇二年一月に設立。〇六年まで銀行が持ち合い解消に伴って手放す株式を買い取った。株式の大量売却で市場の需給が悪化し、株価が下がるのを防ぐ役割を担っていた。買い取りが終わった時点の保有株は約一兆六千億円だった。
 取得機構は当時買い取った株式の一部をすでに売却しており、この余剰金をもとに銀行の保有株などを買い取る。同時に日銀にも銀行保有株の買い取りを要請する方向だ。
 日銀は〇二年から〇四年まで、銀行保有株を買い取っていた。買い取り終了時点での取得価格は約二兆円。その後、市場で売却していたが、現在は凍結している。
 急激な株価下落が続けば保有株式の含み損が膨らみ、銀行経営に打撃となりかねない。政府は銀行保有株の買い取りを進めることで銀行の財務基盤を強化し、貸し出し余力を高めて貸し渋り対策としたい考えだ。
 金融機能強化法改正案の公的資金枠も拡大する。さらに政府は主要行に、自主的に資本調達を促す。銀行の財務基盤を強化して市場の動揺に対応できる体制を整え、日本の金融市場の健全性をアピールする。
 政府などの取り組みだけでなく、民間にも協力を求める。年金や生命保険など民間の機関投資家には、株式を買うように要請する考えだ。

欠かせぬ国際協調(解説)
 世界を駆け巡る投機マネーの猛烈な反転が、ついに急速な円高・株安となって日本市場を襲った。政府は銀行保有株の買い取り再開などの緊急対策を打ち出す。異常事態に機敏に対応するのは大切だが、小手先の株価対策だと市場が受け止めれば、むしろ逆効果ともなりかねない。米欧当局とも緊密な協議を重ね、市場安定へ為替や金融政策も含めた国際協調を探ることが急務だ。
 二十四日、対ユーロで半日余りの間に一四円も円高に触れた円相場。引けにかけてパニック的に下げた日経平均株価。どちらも常軌を逸する、急激すぎる動きだ。
 ハンガリーやアルゼンチンなど、高金利でリスクも高い中堅・中小国に集まっていた投機資金が一斉に逃げ出した。マネーは「消去法」として、低金利で金融システムも比較的安定している円買いに猛然と走っている。検討中の緊急対策は、株安の是正を念頭に置くが、こうした資金の地滑り的な動きにも対処する内容とすべきだ。政府が打ち出す追加経済対策との整合性も課題となる。
 その場しのぎで株安に対抗しても、効果がないどころか、市場に足元を見透かされるリスクを抱える。
 政府は日銀、そして海外当局と市場安定への十分な協力姿勢を示す必要がある。「無策」と印象づけられないように、急激な相場変動を止めるだけの「迫力」がある国際協調が不可欠だ。
 週明けまでに為替市場への介入や金融政策上の手段など、幅広い政策手段を確保しておくしかない。米国での金融危機に関する首脳会合まであと三週間。金融市場は日本を標的にして、国際協調の成否を早くも瀬踏みしようとしている。
(編集委員 菅野幹雄)

OPECが150万バレル減産
NY原油は大幅反落
【ウィーン=清水泰雅】石油輸出国機構(OPEC)は二十四日、ウィーンのOPEC本部で緊急臨時総会を開き、十一月から日量百五十万バレルを減産することを決めた。原油相場が今年七月の一バレル一五〇ドル近くから半値以下に急落しているため、減産に踏み切る。ただ原油相場が下げ止まるかは不透明で、十二月にも予定する次回の総会で再び対応を協議する。(関連記事8面に)
【ニューヨーク=米州総局】二十四日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油相場は大幅反落。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の十二月物は一時、一バレル六二・六五ドルをつけた。

2008年10月25日