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内部統制報告制度、社内の問題点あぶり出す(日本経済新聞2009/01/28)

内部統制

内部統制報告制度
社内の問題点あぶり出す
「不適切処理」公表相次ぐ
 上場企業に正確な決算書作成の体制づくりを義務付ける「内部統制報告制度」が導入されるなか、会計上の不正行為が見つかったと公表する企業が相次いでいる。内部統制報告書の提出開始は六月末だが、法制が整った二〇〇六年から既に公表事例が増加し、〇八年は二十五社と前年より三社増えた。各社とも社内整備を急ぐが、費用負担など課題も残る。
 「連結子会社において不適切な取引が行われていたことが判明しました」。昨年九月、鹿島は子会社で循環取引があったと公表した。社内調査の結果、関連損失は約七十億円。調査を担当した幹部は「内部統制には力を入れてきた。残念だが通常の監査では分からなかった」と省みる。
 同様の事例は多い。三井物産は支社で約八年にわたり循環取引があったと明らかにした。環境銘柄として注目されるジーエス・ユアサコーポレーションも子会社での循環取引を公表。ドラッグストアのスギホールディングスは元取締役経理部長が約七年間、資金を横領していたと発表した。
 企業会計に関係する不正や不適切な行為があったと証券取引所を通じて開示した企業は、〇七年から急増。〇八年には二十五社に達し、〇六年と比べ一・八倍も増えた。
 発表の増加は〇六年六月に法改正され、〇八年四月から金融商品取引法の下で内部統制報告制度が施行されたのと重なる。同制度は財務諸表の信頼性向上のため、企業の管理体制の整備を促すものだ。エンロンなどの巨額な不正会計事件を機に米国で制定された企業改革法の日本版である。
効用や費用負担に課題も
 〇六年施行の会社法でも一定の大企業に内部統制の構築が求められた。だがこれだけでは鹿島や三井物産など管理体制を整備していたはずの企業でも見落としがあった。
 これに対し報告制度では全上場企業が対象だ。内部統制報告書は〇九年三月期分から有価証券報告書に添付する。期末時点で問題や欠陥があれば「重要な欠陥がある」と記載する義務がある。逆に期末までに改善されれば記載なしで済む見通し。六月末から報告書の提出が始まるが、偽りがあれば経営者に懲役や罰金が科される。各社は既に判明した不適切な取引などを事前に開示し、改善しながら社内体制を整えようと奔走している。
 高砂熱学工業は昨年七月、支店の現金出納担当者の約九年間に及ぶ横領が発覚し、三億六千万円の特別損失を計上した。「担当者に任せきりで、けん制機能がなかった」と木下悠紀治取締役は原因を分析する。
 企業は報告制度への対応にあたり、業務の流れを文書などにまとめ、経営者が点検する。これまで見落としてきた事業担当者の長期在任や、子会社での不正へのけん制機能の整備が期待される。
 ただ、費用対効果を疑問視する向きもある。「対応すべき事項が多すぎる」と、あるネット関連企業の幹部はこぼす。監査報酬は通常の三倍弱に跳ね上がったうえ、専任社員の採用などで関連費用は一億円を超えた。担当者は「内部統制も会計監査と同様、監査人がやっているので指摘されたら断れない」という。新興市場に上場する会社では、上場維持費用の上昇を理由に非公開化に踏み切る例も増えている。
 報告書は監査証明書と似た形で紙一枚程度の簡素なもの。大和総研の大村岳雄経営戦略研究部長は「十分な情報開示といえるか疑問が残る」と話す。投資家にとって意義ある制度になるかどうか試行錯誤が続きそうだ。
会計上の不適切な処理や不正行為があったと開示した主な企業   
会社名   内 容
伊  藤  忠   売上数量の過少計上、仕入数量の過大計上
長  谷  工   資金の横領
コ  ク  ヨ   不明支払い、架空取引、利益操作
スギHD   資金の横領
三  井  物   循環取引
高  砂  熱   現金を着服
鹿  島   循環取引
オオゼキ   入金伝票などの改変
GSユアサ   循環取引

2009年01月28日