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国際会計基準激化する覇権争い(上)(日本経済新聞2010/01/26)

IFRS関係

国際会計基準
激化する覇権争い(上)
 国際会計基準(IFRS)のルール見直しを巡る欧米など多国間の覇権争いが活発になりつつある。金融危機後に20カ国・地域(G20)のお墨付きを得たことで世界の資本市場への影響力が増し、各国の利害調整が一段と複雑になっているためだ。国際基準導入にかじを切った日本はどう存在感を発揮していくべきか。最新動向を追った。
利害調整、一段と複雑に
欧米、微妙な不協和音も
 「今回の提案は、金融市場の変動をかえって高めかねない」。英金融サービス機構(FSA)のターナー会長は21日、国際会計基準審議会(IASB、本部ロンドン)が提案した新たな引当金処理の考え方に疑問を投げかけた。
 欧州連合(EU)は昨年11月にも金融商品会計の新ルール適用先送りを表明。IASBは欧州の催促で金融危機関連のルール見直し作業を急いできただけに、相次ぐ反対姿勢への転換に戸惑いを隠せない。
 EUが事実上の基準“緩和”を求める背景には、金融危機で傷ついた欧州経済の苦境がある。ユーロ圏銀行だけで不良資産による潜在損失が約1900億ユーロ(約25兆円、欧州中銀予測)にのぼるとの観測もある。EUにはルール導入の衝撃を和らげたいとの思惑が透けて見える。
 グローバルな会計基準作りを主導してきたはずの欧米間にも微妙な不協和音が生じている。「(国際基準適用に向けた)今後の行動計画はおそらく2010年初頭に決めることになるだろう」。昨年12月、米証券取引委員会(SEC)のウォルター委員はこう表明した。昨年末までに新たな行程表(ロードマップ)が示されるとみられていただけに、関係者の落胆を誘った。
 米国は08年、国際基準を適用するかを11年に最終判断するという素案を示したが、その後は明確な姿勢を明らかにしていない。11年を目標とする国際基準と米国基準の共通化(コンバージェンス)作業も、一部で考え方の違いが目立つ。
 「導入方針は変わらない」との見方が大勢だが、欧州の議論の行方を慎重に見極めようとしているもようだ。折しも21日には米国が新金融規制案を発表。議会で激しい論争となるのは必至とみられ、SECの会計基準共通化作業はその余波で遅れる可能性もある。
 基準作りが難しくなっているのは、市場のインフラを担う会計の重要性が増しているからでもある。金融危機の混乱を踏まえ、G20は財務報告の透明性を高めるべきだとの認識で一致。IASBにグローバルな基準作りを促した。その水面下では、自国に有利な基準にしようとの駆け引きが激しくなっている。IASBも中立公正な体制の構築に動いているが、外部からの圧力は高まるばかりだ。
 「暗雲が垂れこめてきた」(IASBの金融危機助言グループ議長)。関係者には、米国基準との共通化作業が遅れていることへの懸念も浮上し始めた。世界共通の会計基準作りという壮大な試みは、関係国の思惑が交錯する中での「生みの苦しみ」に直面している。
国際会計基準を巡る最近の動き(2009年)

2010年01月26日