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税制論議、企業を素通り(日本経済新聞2009/12/23)

法人税

法人税下げは遠く
 2010年度の税制改正大綱では、研究開発減税など法人税関連の租税特別措置が軒並み延長となった。景気低迷からなかなか脱出できない日本経済に配慮し、マニフェスト(政権公約)で掲げた特別措置の大幅見直しにはあえて手をつけなかった。一方で世界的な潮流となっている法人税率の引き下げなどの議論は素通り。企業活動の活性化を促すには、力不足の内容となった。
景気に配慮、租特、大半は維持
 来年度の税制改正では、大半の租税特別措置を継続し、増収効果は初年度で700億円程度にとどまった。税調が当初縮減を主張していた研究開発減税や中小企業投資促進税制などは2年間延長。プラスチックや衣料品など生活用品の原料として幅広く使われているナフサ(粗製ガソリン)の免税措置も続ける。
 経済産業省の試算によると、1年分の研究開発減税(約2500億円)の経済効果はその後の10年間で約1・7兆円に及び、利用企業は8000社にのぼる。ナフサへの課税は世界でもほとんど例がなく、石油化学業界などが見直しに強く反発していた。三菱総合研究所の後藤康雄氏は「税調がマニフェストにこだわりすぎず、必要最低限の減税を残したことは評価できる」と話す。
 企業グループに対する法人税制も見直す。現行制度では、連結納税していない企業グループの親会社が100%子会社から配当を受け取ると、一部を税務上の収益である「益金」に算入する必要があるが、これを非課税にするなど制度を大幅に変える。グループ企業の余剰資金を設備投資などに振り向けやすくすることで活動を活性化させることを狙っている。
 ただ、経済活性化や中期的な成長に向けた改革の動きは鈍かった。例えば法人税率の引き下げ。日本の国・地方を合わせた法人実効税率は約40%。競争力強化の旗印のもと韓国など新興市場国が法人税率を軒並み引き下げる中、日本は世界でも突出して高い水準だ。産業界からは「税率が高すぎて日本で事業を続けられない」との声も出ているが、今年の税調ではほとんど議論されなかった。中小企業の法人税の軽減税率引き下げも財源不足で実現しなかった。
 一方で税調は中小企業の交際費の一部を損金算入できる措置を2年間延長。オーナー社長の報酬の一部を課税対象としている制度も廃止、負担を減らした。民間エコノミストからは「中小企業の経営者を優遇するより成長促進や一般の人の雇用支援などに資金をまわすべきだ」との指摘もある。
法人税関連の主な税制改正

経団連、経済界の要望反映を歓迎
 政府が2010年度の税制改正大綱を決めたことを受け、日本経団連の御手洗冨士夫会長は22日、「研究開発促進税制の延長など経済界の要望が広く入り、エコカーや住宅の減税は当面の景気対策にも考慮された」とのコメントを発表した。日本商工会議所の岡村正会頭も「日本経済の早期回復に向け、中小企業の活力強化に資する」との談話を出した。

子ども手当、半分は貯金、電通総研調査
 電通総研は子ども手当の使い道について、支給額のほぼ半分が子どもの将来のための貯金に回るとの調査結果を発表した。2010年6月から月額1万3000円で1年間支給された場合、消費押し上げ効果は全国で約1兆2900億円になると試算。教育産業への影響が大きいとした。
 調査は同手当の受給対象者500人に実施。「子どもの将来のための貯金」に回るのは平均で月6636円で、月額支給額の51%に達した。「子どもの塾・通信教育など」が1485円で、「通園料、授業料の補てん」が1429円でそれぞれ支給額の11%だった。

2009年12月23日