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ウィルコム、更生法活用で再建へ(日本経済新聞2010/01/27)

企業再生

ウィルコム
更生法活用で再建へ
機構・ソフトバンクと調整
 PHS最大手のウィルコムは会社更生法を活用して再建を目指す方向で、支援を仰ぐ公的機関の企業再生支援機構やソフトバンクと最終調整に入った。取引金融機関などと再建計画作りを進めてきたが調整は難航。PHSサービスを継続しながら手続きの透明性を確保して抜本的な再建を進めるには、法的整理による裁判所の関与が不可欠と判断した。
 ウィルコムは機構とソフトバンクの支援を前提に更生法の適用を申請する「プレパッケージ(事前調整)型」の法的整理手法を活用する。同手法は日本航空の再建にも使われている。
 ウィルコムは2月にも東京地裁に更生法適用を申請する方向で調整している。機構とソフトバンクは更生手続き開始決定後、速やかに出資を含む支援を表明する方向だ。ただ機構内にはPHS事業の将来性を不安視する意見もあり、支援の可否を慎重に判断する。両者とともに支援を検討している投資ファンドのアドバンテッジパートナーズが出資するかは調整中。
 機構はウィルコムを現行のPHS事業を手掛ける会社と、通信速度が早い次世代PHS事業を手掛ける会社に分割する案を検討している。現行PHS会社の再建は機構が、次世代PHSの展開はソフトバンクがそれぞれ主導する見通しだ。
 昨年9月末時点のウィルコムの負債総額は、金融機関からの借り入れ935億円を含め計1731億円。ウィルコムと機構は金融機関などに対し総額1000億円超の債権放棄を求める方針だ。
 ウィルコムには米投資ファンドのカーライル・グループが60%、京セラが30%、KDDIが10%出資している。再生案では支援決定後に株主責任を明確にするため、100%減資を実施する。
 ウィルコムは過去の設備投資に伴う多額の負債が重荷となり昨年9月に私的整理手法の事業再生ADR(裁判外紛争解決)手続きを開始したが、金融機関などとの調整は難航。機構の活用を検討しているが、再建手続きをより透明にするには法的整理が必要との判断で関係者がほぼ一致した。
 ただ更生法の活用で顧客離れやブランド価値の低下も懸念される。09年12月末のウィルコムのPHS加入者は約430万件。08年12月末に比べ27万件減少するなど苦戦が続いている。
ウィルコムの再建スキーム案
透明性の確保カギ(解説)
 ウィルコムが会社更生法を使い経営再建を目指すのは、企業再生支援機構による支援を確実にするためだ。機構は公的資金の注入にあたって透明性を重視しており、私的整理ではなく裁判所の監督下で行う法的整理が適当だと判断した。
 機構は金融機関などの債権者調整を自ら進めることができ本来は私的整理に適した組織。ただ19日に支援決定した日本航空や、ウィルコムは巨額の公的資金の注入を必要とするほか、政府が強く関与する許認可事業でもある。「税金を使って行政の失敗の尻ぬぐいをする」という印象を避けるには、債権カットなどで強い権限を持つ裁判所と組む必要がある。
 ウィルコムの前身は第二電電(DDI)子会社のDDIポケットで、実質的な創業者は日航会長に就く稲盛和夫京セラ名誉会長。稲盛氏が機構の案件に立て続けに関与することを問題視する声も出かねない。
 ただ京セラはウィルコムの第2位株主だが法的整理で100%減資を迫られ、150億円分ある一般債権も大幅にカットする見込みで株主責任を厳しく問われる。今後の更生計画作りの過程でも支援機構が「透明性」を確保できるかが課題になる。

2010年01月27日