2010年02月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

会計基準来年からこう変わる(2)ストックオプション――人件費として計上義務化(日経新聞2005/12/17)

会計基準関係

 「ストックオプション(株式購入権)の付与を中止し、今後再開する計画もない」――。人材派遣業大手メイテックは今年五月、七年前から従業員らに毎年与えてきたストックオプション制度を、二〇〇六年三月期からやめる方針を公表した。ストックオプションを人件費として費用処理する会計基準の草案が、その前の年の暮れに出たため、先を見越して別の業績連動報酬制度に移ることを決めた。
 企業会計基準委員会が近く正式決定するストックオプションの会計基準では、来年五月予定の会社法の施行後に、従業員らに与えるストックオプションから、費用処理を義務付ける。
 三月期決算企業では実質的に〇七年三月期から、ストックオプションを付与すると、決算に人件費として計上しなければならない。過去に出した分は新会計基準の適用外だが、新たに付与すると期間利益を押し下げる要因になる。
 ストックオプションは全上場企業のざっと三分の一にあたる千二百四十三社が導入。野村証券金融経済研究所の試算では、〇四年度にストックオプションを付与した上場企業では、ストックオプションを費用処理すると同年度の経常利益が平均一・五%減るという。特に、新興市場などに上場する企業だけでは、経常利益が一八・七%程度押し下げられる。
 野村証券の西山賢吾ストラテジストは「新興市場に上場している企業は、会社の規模に比べストックオプションの付与額が大きく、深刻な影響がでる場合もある」と分析する。従来はストックオプションの会計基準がなかったうえ、オプションを役員らに与えても会社から現金が流出するわけでもないため、企業の決算には反映しなかった。新基準の導入で利益に大きな影響を受ける企業が出る可能性がある。
 米国会計基準を採用する主要企業でみると、費用計上の影響が具体的に分かる。アドバンテストの〇五年三月期の連結純利益は三百八十億円だったが、ストックオプションの費用計上で二十二億円の減益要因となった。米基準では、費用計上せずにストックオプションの費用を決算書の欄外注記で開示する方法も認められる。注記によると、ソニーの前期の純利益は、ストックオプションを費用計上していれば、発表より約四十七億円少なかったという。
 損益に対するマイナスの影響以外にも見逃せない点がある。新基準ではストックオプションが権利行使されないまま満期を迎えた場合は、過去に計上した費用を戻し入れ益として特別利益に計上する。本業とは関係ない要因で損益が振れることになる。
 新基準ではストックオプションに関する詳細な情報開示も求める。付与したオプション数を株式数ベースで、役員や従業員別に開示するほか、評価額、権利行使があった場合は行使時の平均株価なども開示する。評価額の見積もり方法などの開示を義務づける。

▼ストックオプション あらかじめ決めた価格(権利行使価格)で自社株を買える権利。会社が役員や従業員に報酬の一種として与える。株価が権利行使価格を上回れば、時価より割安で株式を買え、市場で売れば利益を稼げる。
 オプションの価値は権利行使の価格や期間、対象とする株式の過去の値動きなど様々な要因で決まる。実務上は、オプションの価値を計算するのにブラック・ショールズ・モデルという計算式などを用いて価値を算出する。新しい会計基準では、付与したオプションの価値を人件費として処理する。税務上は権利行使時に損金扱いとなる。

ストックオプションの費用計上で2005年3月期の企業業績に与える影響      
(単位億円、カッコ内は減少率%)      
  連 結純利益  ストックオプション費用計上後純利益  
NEC  678  660(▲2.6)  
ソニー  1,637  1,590(▲2.9)  
京セラ  459  431(▲6.1)  
トヨタ  11,712  11,696(▲0.1)  
三菱商  1,823  1,819(▲0.3)  
オリックス  914  892(▲2.4)  
コナミ  104  98(▲5.6)  
(注)いずれも米国会計基準。ソニーの純利益は子会社連動株式向けの利益を除いたベース

2005年12月17日