日航、負債最大の2.3兆円(日本経済新聞2010/01/20)
企業再生
日航、負債最大の2.3兆円
更生法申請、機構が支援
公的資金枠9000億円
運航は継続
経営難に陥っていた日本航空は19日、2子会社とともに東京地裁に会社更生法の適用を申請し、同日手続き開始の決定を受けたと発表した。グループの負債総額は2兆3200億円で、金融機関を除く事業会社では過去最大。企業再生支援機構も支援を正式に決定、日本政策投資銀行とともに出融資として総額9000億円の公的資金枠を用意する。一連の決定を受け、東京証券取引所は日航株式を同日から1カ月間、整理銘柄に指定、来月20日に上場廃止にすると発表した。(上場廃止は3面「きょうのことば」参照)
上場廃止 来月20日
日本の航空界の代表だった日航は公的管理下で抜本再建を目指す。支援機構は、3年以内に保有する株式や債権を新たなスポンサーに売却しなければならない。支援機構・日航はまずグループ人員の約3割に相当する1万5000人超を削減、路線撤退や機体の小型化などスリム化を加速。生産性を引き上げV字型の収益回復を目指す。
更生開始決定を受けたのは、日航と運航子会社である日本航空インターナショナル、金融子会社のジャルキャピタルの3社。3社の昨年9月末時点の負債総額は2兆3222億円で、2000年に破綻したそごうグループを超え、事業会社では過去最大となった。
高コスト体質の改善が進まなかったことに加え、08年秋のリーマン・ショック以降の世界不況などが響き売り上げが急減。財務体質は悪化の一途をたどった。新政権が救済に動かなかったことも破綻の一因となった。
日航の西松遥社長は19日付で引責辞任。支援機構の意思決定機関である企業再生支援委員会の瀬戸英雄委員長らと並んで都内で記者会見した西松氏は、「株主や取引金融機関をはじめとする債権者には迷惑をかけ大変申し訳ない」と陳謝した。
瀬戸氏は法的整理を併用した狙いを「公的資金を投入するためには公平で透明な手続きが必要」と指摘。日航会長に2月1日付で就任する稲盛和夫京セラ名誉会長は「再生計画を実行すれば再建は十分可能だ」などとしたコメントを発表した。
支援機構・日航は後任社長の人選を急ぐが、上原雅人日航専務執行役員がグループCOO(最高執行責任者)臨時代行として1月末まで指揮を執る。管財人には法人としての支援機構と片山英二弁護士が選任された。
政府声明、「再生まで支援」
政府は19日、「日航が再生を果たすまでの間、十分な資金を確保するなど運航の継続と確実な再生を図るため必要な支援を行う」とした閣議了解に基づく声明を和英両文で発表した。日航が運航する国・地域にも伝達。日航に対しては「全社を挙げて事業と財務基盤の強化に取り組み、安全な運航の確保に万全を期す」よう要請した。
鳩山由紀夫首相は同日夕、「日航が新しい姿を全力を挙げて示すことが大事だ」と強調。菅直人副総理・財務相は「政権交代があったからこそ思い切って透明性の高い形での再生に踏み切れる」との認識を示した。
日本航空
1951年に戦後初の民間航空会社として設立。米ノースウエスト(現デルタ)航空の機材と乗員を借りて運航を始めた。53年に国が50%出資する半官半民の特殊法人となり、54年に国際線に参入。日本を代表するナショナル・フラッグ・キャリアとして路線網を拡大した。
87年に完全民営化。2002年には旧日本エアシステムと経営統合した。09年3月期連結決算は売上高1兆9511億円、最終損益は631億円の赤字だった。09年3月末の連結従業員数は約4万8000人。
<日航再建計画の骨子>
上場廃止(きょうのことば)
▽…株式など金融商品の取引所が不特定多数の投資家が売買するのにふさわしくないと判断し、当該銘柄を取引できなくすること。投資家の保護を目的に各取引所で上場廃止基準が定められている。株式では上場廃止が正式に決まると「整理銘柄」に指定され、原則として1カ月間売買を認められた後、上場廃止となる。
▽…東京証券取引所の場合、破産・更生手続きや有価証券報告書の悪質な虚偽記載などが廃止基準に該当。市場で取引できる株式の数や時価総額にも基準がある。資本政策の変更などで企業が自主的に上場を取りやめる例も増えている。東証では昨年、上場廃止78銘柄のうち約4割が完全子会社化によるものだった。
2010年01月20日