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支援機構、相次ぐ大型案件(日本経済新聞2010/01/28)

企業再生

支援機構、相次ぐ大型案件
本業の「中小再生」手つかず
 官民共同で設立した企業再生支援機構に大企業からの支援要請が相次いでいる。日本航空に続いて、PHS最大手ウィルコムの支援も大詰めに入っている。ただ、支援機構は本来、地域の中堅・中小企業の事業再生のためにつくられた経緯がある。130件を超す打診があるものの、大型案件に忙殺されて地域企業の再建は手つかずだ。
 「ウィルコムよりも地域企業を優先すべきではないか」。支援機構はすでにウィルコムの資産査定を終え、会社更生法を活用した再建計画も固めつつある。ただ、2月初旬を目指してきた支援決定を先延ばしする案も内部でささやかれ始めた。
 関連法では支援機構の目的を「過大な債務を負う中堅事業者、中小企業者その他事業者の再生を支援する」と定めている。日航やウィルコムは「その他」にすぎず、本業は中堅・中小企業の再生だ。打診案件の大半が地域企業だが、このままでは大企業優先との印象が定着しかねない。
 支援機構は逆風にさらされやすい。官民共同の組織だが、発足からわずか3カ月で政府内に確固とした基盤はない。約130の金融機関も出資するが、むしろ債権放棄などの負担を要請せざるを得ない間柄だ。
 「経済環境の厳しい地方案件をないがしろにしている」との批判が与野党や地方銀行などからわき上がれば、四面楚歌(そか)になりかねない。機構幹部は「巨額の公的資金を扱うだけに、とにかく世論が気になる」と気に病む。
 日航会長に就く稲盛和夫京セラ名誉会長は、ウィルコムの前身企業の実質創業者。民主党との関係も近いだけに、支援機構は両案件の間に「地域企業の支援決定を挟めないか」と模索する。「痛くない腹を探られないようにしたい」(政府関係者)というわけだ。
 ただ、中堅・中小企業の再生案件が決まらないのは「3年以内で再建する」という支援条件が満たせないことも背景にある。株式上場などで投資資金を回収しにくい中堅・中小企業は、再生ファンドも敬遠しがちで「確実に出口が見込める企業はごくわずか」(機構幹部)。日航など大型案件で目立てば目立つほど支援機構の悩みは募る。

2010年01月28日