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国際会計基準激化する覇権争い(下)(日本経済新聞2010/01/27)

IFRS関係

国際会計基準
激化する覇権争い(下)
日本、発言力強化に動く
アジアでの連携不可欠に
 今月中旬、英国会計基準審議会(ASB)のイアン・マッキントッシュ議長が来日し、企業会計基準委員会(ASBJ)委員長の西川郁生氏、国際会計基準委員会財団(IASCF)評議員の藤沼亜起氏ら会計関係者にあいさつ回りをした。「国際会計基準審議会(IASB)議長選出を意識した事前運動が始まった」。関係者はこう解説する。
 デービッド・トウィーディー議長の任期は2011年6月。議長職は米国や欧州連合(EU)、新興国首脳とも幅広く渡り合う高度な政治的交渉力が要求される。基準作りで議長出身国の影響力が高まるとの思惑があるだけに、誰が就くのか関係者も目が離せない。
 実は、日本も国際基準作りでじわりと発言力を高めている。金融庁が昨年6月、10年3月期から国際基準の早期適用を容認した結果、昨年夏の持ち合い株式を巡る基準改定の議論では、日本の主張に配慮した修正が初めて実現した。
 IASBとEUや米国の距離感がやや広がる一方で、日本は15年~16年の強制適用に向けて一歩踏み出した。「日本がIASBの『後ろ盾』として存在感を高め、国際基準の策定に貢献する」(日本経団連)絶好の機会との指摘は多い。
 「アジアの連携を強めましょう」。昨年12月下旬、香港を訪れた日本経団連の島崎憲明・企業会計部会長は、現地の会計業界首脳に語りかけた。日本が国際舞台で発言力を高めるには「有力国との連携が不可欠」(島崎氏)だからだ。
 国際基準は100カ国以上が採用するようになり、基準作りは一部の先進国間の交渉から多国間交渉へと広がった。島崎氏は前年のオーストラリア、台湾に続き、2月までにブラジル、インドを訪問する。会計基準委も10月にはアジア太平洋21カ国・地域の基準設定団体を招く総会を開き、仲間作りに動き始めた。
 中国、韓国、シンガポールといった国々の追い上げも激しい。アジアでは07年、日本に次いで中国がIASBの理事ポストを獲得。IASBの理事増員枠や新設するアジア拠点の候補地を巡って水面下のつばぜり合いは熱を帯びている。
 「日本は世界の中で戦っていかなければならない」。金融庁の三国谷勝範長官は6日、会計基準委の会合で、国益確保に動く決意を新たにした。金融庁は、米証券取引委員会(SEC)などとともにIASBを監視するモニタリングボードのメンバー。昨年秋には欧米主導で「基準作りの期間短縮化」を求める提案が浮上し、三国谷長官が「世界各国が平等な意見を発信する機会を持つべきだ」とけん制する一幕もあった。
 バーゼル銀行監督委員会が定める金融機関の自己資本規制と同じく、会計基準も世界の資本市場を形作る重要なルールの一つだ。自国の利害を主張するだけでなく、他国の意見をまとめながら議論をどう主導していくのか。新たな局面で関係者の手腕が試される。
国際会計基準を巡る主要国の動き

2010年01月27日