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JR東、紀ノ国屋を買収(日本経済新聞2010/01/27)

企業再生

JR東、紀ノ国屋を買収
自前スーパー
新たな収益源
 東日本旅客鉄道(JR東日本)は26日、首都圏を中心に高級スーパーを展開する紀ノ国屋(東京都国立市、増井信社長)を買収すると発表した。4月1日付で完全子会社化し、紀ノ国屋の店舗を駅ビル・施設に積極導入する。景気低迷や少子化で旅客収入が伸び悩む中、駅立地の強みを生かして小売業をさらに強化。本業との相乗効果も高め、グループの収益力を底上げする狙いだ。
駅立地、本業と相乗効果
 JR東はグループでコンビニエンスストア「ニューデイズ」などを展開しているが、スーパーを手掛けるのは初めて。
 同社は紀ノ国屋の創業家などから全株式を譲り受ける。買収額は明らかにしてない。紀ノ国屋の新しい経営体制などは今後詰める。JR東は17店と従業員約580人を引き継ぐ。現在、紀ノ国屋は1店だけJR施設に入居している。今後は「エキナカ」と呼ばれる駅構内や駅ビルを中心に出店を進め、駅周辺の展開も検討する。
 JR東グループは駅一体型を中心に専門店ビル「ルミネ」や「アトレ」などを運営。JR東の駅は合計で1日約1680万人が利用、同社の商業施設は首都圏の通勤・通学客の「ついで買い」の需要も取り込み、年間売上高は1兆円規模と大手小売業の一角を占めている。中でもルミネは、テナントなども含めた2008年度の売上高が2653億円と10年前に比べて1・7倍と好調だ。
 ただ従来は駅ビルなどに飲食店や小売店などをテナント出店してもらう形態が大半。高級感や輸入食品の品ぞろえから主婦らに人気の紀ノ国屋を核テナントに据えて、商業施設の魅力を高める。
 紀ノ国屋は08年にリニューアルオープンした東京・港の基幹店の運営費などがかさんだうえに、高価格帯商品が一部消費者に敬遠されて採算が悪化していた。JR東の傘下入りを機に今後は出店を拡大するとみられるが、既存店の閉鎖や価格見直しが課題になりそう。
 スーパーなど小売業では今も創業家が筆頭株主であることは珍しくないが、経営の見通しが立ちにくくなり、保有株を手放すケースが出ている。高級スーパーの成城石井も04年、焼き肉店「牛角」のレインズインターナショナル(現レックス・ホールディングス)に対し、創業家が保有株を売却している。
消費低迷下、駅出店の魅力増す
小売りと鉄道急接近
紀ノ国屋は消費低迷で業績が伸び悩んでいた
 消費低迷が長引く中、乗降客の需要を確実に取り込める駅立地の存在価値が小売市場で高まっている。JR各社は小売り大手との連携で駅施設の魅力を高める一方、出店余地が狭まるコンビニエンスストアなども駅関連に商機を見いだしている。駅立地を巡って鉄道と小売業が接近し、垣根を崩す再編・提携も加速してきた。
 他のJRも主力の輸送事業の成長にかげりが見え、立地に優位性のある小売業の拡大に積極的だ。西日本旅客鉄道(JR西日本)は三越伊勢丹ホールディングスと2011年春に「JR大阪三越伊勢丹」(大阪市)を開業する。専業が持つ品ぞろえのノウハウやブランドの活用が狙いだ。
 一方、小売り大手も駅に合った店舗開発をテコに駅構内などへの出店を本格化している。代表はコンビニ。全国の店舗数は4万5千店を超えて飽和感が高まり、路面の好立地は少ないだけに駅立地は魅力だからだ。セブン&アイ・ホールディングス傘下の首位セブン―イレブン・ジャパンは京浜急行電鉄と提携し、標準より大幅に小さい店を駅構内で11年2月末までに約80店出店する。
 ドラッグストアも改正薬事法の施行で一般用医薬品(大衆薬)を扱うスーパーなどが増えて競争が激化し、新たな戦略を迫られている。マツモトキヨシホールディングスは昨年夏から5分の1に縮小した小型店を駅構内に2店展開。東名阪の都市部の駅を中心に、多店舗展開を目指している。
鉄道各社の小売業への取り組み
紀ノ国屋
 1910年の創業以来、増井家が経営。輸入食品などを扱う高級スーパーの先駆け。首都圏で青山(東京・港)や等々力(同世田谷)の店のほか、小型店「OMO KINOKUNIYA(オモ・キノクニヤ)」など計17店展開する。2009年3月期のグループ売上高は206億円。

2010年01月27日